バックナンバー 中国最新情報 “タバコ税率引き上げ 喫煙大国・中国の現状!” 2015年4月号

中国最新情報 “タバコ税率引き上げ 喫煙大国・中国の現状!” 2015年4月号

 

今月の特集のタイトルにも記している通り、中国は喫煙大国です。

路上はもちろんのこと、レストランでも分煙が未だに実施されていない

ところも多く、街を歩けば火のついたままの吸殻がそこかしこに

飛び交っています。投げ捨てられる吸殻で火傷をしないよう、タバコの

匂いがしたら必要以上にパーソナルスペースを狭めず距離を取って歩く、

間合いを詰められたら警戒する、窓から投げ捨てられる可能性もあるので

頭上にもぬかりなく気を配る、などの機敏な動きと動体視力が必要になります。

公共の場での禁煙サインもここ数年でようやく広がりを見せつつある

といった情況であり、且つこれもあくまでも観光地や大都市の現状で

あるため、その他地域では未だ喫煙が風習の一部として根付いている

ところの方が多いでしょう。結婚式の贈答品には全国的にいまだに

タバコが欠かせず、海外旅行のお土産に買いだめする人も多数です。

日本含め世界的にここまで禁煙への取り締まりが強化されたのは直近

数十年でのことであり中国の取り組みだけが遅々として進まないという

わけでは決してありませんが、母体となる総人口の多さから各国の注目が

集まっていたことも確かです。そこで今回の特集では先日新たに

発表された増税政策と、中国の現状をご紹介したいと思います。

 

  • 6年ぶりのタバコ税率引き上げの詳細

 

今年5月初旬、中国では6年ぶりにタバコの税率を引き上げる旨の通知が

発表されました。

 

5月8日、財政部は5月10日よりタバコの消費税を調整する旨の通知を発表した。

(中略)同時に、国家タバコ専売局が同日に印刷し発表した通知によると、

5月10より国産タバコ及び輸入タバコの卸売り価格、推奨小売価格も時を

同じくして調整される。(中略)中国のタバコ消費税は過去4回調整されて

おり、1994年に税制が制定された後、1998年、2001年、2009年にそれぞれ

調整が実施された。過去の調整と比較し、今回の調整の最大の特徴は、

税率の調整と価格の調整が同時に実施されたことである。

中央財経大学経済研究院院長、王雍君氏は「税率と価格を連動させた

方式の最大の目的はタバコの消費をコントロールすることであり、

同時に卸売価格も調整することで小売価格に変動が反映され、

タバコ規制の効果を得ることができる」と発言している。

http://news.sina.com.cn/c/2015-05-12/003031819242.shtml?_t=t&qq-pf-to=pcqq.c2c

(2015年5月12日 新浪WEBサイト)

 

実際に小売価格に増税の結果が反映されない限り消費者の禁煙を促す

ことはできないという意見はもっともで、専門家の予測によると、

今回の増税で2015年のタバコの最終的な小売価格は昨年比で10%以上の

値上げになると試算されています。記事によると各省、市の小売価格は

既に続々と値上げされており、その価格変動はやはり10%前後であるようです。

しかしながら、単なる値上げで片付くほど中国の喫煙問題は単純では

ありません。減速したとはいえいまだ国内には好景気ムード漂う中国、

多少の値上げで禁煙に踏み切る消費者はそう多くはないのが現状です。

タバコというものがそもそも“嗜好品”、即ち“余裕の範囲内で購入するもの”

であり、毎月の予算内で量を減らすことこそあれ、完全な禁煙には至らない

とする人が圧倒的多数を占めるでしょう。私は非喫煙者のため禁煙の辛さに

ついては実感が沸きませんが、仮に規制の対象が“コーヒー”であった場合

おそらく朝はいつまでも目が覚めず、午後は午後で機嫌が急降下し、

他人のコーヒーの匂いを嗅いではそわそわと落ち着かず、たとえ一杯

数百円程度値上がりしたところで結局は予算の許す範囲内で豆やドリンクを

買い続けるであろうことは想像が付きます。しかし、一方で値上げが非常に

大きな効果を上げることができると見込まれている分野もあります。

中国のタバコの小売価格はメーカーによって大きく異なり、

目の飛び出るような価格の高級ブランドもありますが、一方で日本円で

1箱50円程度のタバコ(小売価格2.5元)もあり、価格の安さが若年の

喫煙人口の増加原因の一つではありました。

 

価格に敏感な青少年に対し、“増税による喫煙のコントロール”は大きな

効果がある。貴州市疾病制御センター健教所所長の楊澤紅氏は

『わが国のタバコは価格が安価で、中学生でも買うことができる。

タバコ税と小売価格を引き上げることで、中学生がタバコに手を出し

にくくなる』と紹介している。

(上述の同記事より抜粋)

 

中国のタバコは他国同様(自動販売機がある国は少数派です)、

小売店やコンビニでの対面による販売が主な流通経路になっています。

年齢確認はあまり徹底されておらず、身分証の提示が求められることはほぼなく、

仮にあやしまれても顔見知りや「親のお使い」という口実があれば難なく

タバコが手に入るので、価格の引き上げは確かに一定の効果があります。

もっとも、両親、双方の祖父母からお小遣いをもらい放題の裕福な

都市部の一人っ子はそこらの大人が羨むほどそのキャッシュフローは

潤沢ですので、実際の効果の程は未知数です。10元が11元になったところで、

上海市に限れば子供にとっても誤差の範囲の出費です。

子供の喫煙防止についてはもっと根本的な対策が必要でしょう。

中国はWHOの“タバコの規制に関する国際条約“世界保健機関枠組条約

(以下WHO FCTCと記載)”に2006年の1月に調印しています。

以来、一定の効果は出ているものの、中国の喫煙を死因とする死者数は

2050年に年間300万人にのぼると予測されており、喫煙人口は3億人、

残りの十数億の人口が常に副流煙の被害にさらされているという楽観視

できない情況にあります。一体何が問題なのでしょうか。

    

  • 広告規制の落とし穴とは?

 

前述の国際条約である“WHOFCTC”には様々なガイドラインが含まれて

いますが、その中に「タバコ広告」「タバコ警告表示」という項目があります。

内容はそのまま、できるだけ消費者の目にタバコの広告を触れさせず、

特に公共の場や子供が目にする箇所への広告の規制やタバコの箱に

『喫煙はあなたの健康を害する恐れがあります云々』の警告文を付ける

などの消費を抑制するための具体策です。タバコの箱への警告文の表示は

方法によっては大変効果的なのですが、現在、中国における警告文は日本と

同様に文字のみであり、写真もイラストもないので視覚によるインパクトは

ほぼないといえます。 タバコ製品がパッケージに追加する図式の

健康被害への警告は、政府がWHOFCTCの実施を確実なものにするに

あたり費用対効果が最も高い方法である。しかし、現在中国のタバコの箱

にある文字のみの中国語の警告の効果は非常に低い。十分に目立っておらず、

明確でなく、系統的な警告文や情報・写真もなく、定期的な更新もなされて

おらず、禁煙へのアドバイス等も書かれていない。

http://www.qnr.cn/med/news/yxdt/201504/1066605.html

(2015年4月20日 青年人医学教育ネット)

 

f:id:jpbd:20150701170217j:plain

 

(写真:警告が書かれたタバコ。確かにデザインと一体化しており

    全く目立ちません)

 

一方、広告については中国では1995年、すでに中華人民共和国広告法に

おいて5つのメディア(ラジオ、映画、テレビ、新聞、雑誌)及び4つの

場所(車待合室、映画館、会議室、体育スタジアム)における広告が

禁止されていますが、禁止はあくまでも“広告”だけであり、別途規定が

ない限りこれらの場所での喫煙そのものは規制されません。

また、大事な箇所なのでしつこく繰り返しますが禁止は“広告”だけ

ですので、「主人公が何かにつけてやたらと喫煙している映画やドラマ」、

「雑誌のモデルが口にくわえている葉巻」などは当然、商品名が出て

広告とみなされない限りはお咎めナシです。中国のTVドラマや映画は

ものすごく喫煙の描写が多く、特に近代をモデルにした時代劇などはその確立が

ぐんとはね上がります。禁煙の概念自体がなかった時代が舞台であり、

どうしても喫煙がファッションや嗜みの一部としてみなされていた頃の話に

なりますので一概に制作側が悪いとは言えないのですが、それでも場面が

切り替わるたびにタバコを咥えた人物が一斉に登場するドラマなどには

さすがに中国の視聴者も辟易しているようで、インターネットには

「仮に主人公がドラマの中のアクシデントで死ななかったとしても

 確実に肺ガンで死んでるな」

「1本撮るのに一体何箱吸ったんだ!?」

などという批評が流れ、2011年からはNGO団体による“脏烟灰缸奖=

汚い灰皿賞”という不名誉な賞が喫煙率の高い映画やドラマに対し贈られる

ようになりました。米国のラジー賞のタバコ版のようなものです。

 

“脏烟灰缸奖=汚い灰皿賞”についての詳細

http://baike.baidu.com/link?url=43KL52vVBhwrJzxY3dRlJ_U7zff8gYlaI1IvrinY3O1NmB9XNSM-ElgANtMRHB02949xPVSgr1r6fcicrn2gGa

(百度知道)

 

ここに出ている映画やドラマは私もいくつか見たことがありますが、

確かに思い出す限りほとんどの場面がタバコの煙にかすんでいたように

思います。人生発の喫煙に踏み切ったきっかけはここ中国も日本も

大差なく『タバコ=大人の証に見えた』『かっこよく見えた』という意見が

圧倒的多数です。小売価格の引き上げで本当に子供の喫煙が抑制できるのか、

私が疑問に思うのもこの理由のためです。どんなに箱に警告を付けようと、

TVで禁煙広告を流そうと、目の前でタバコを吸う大人が減らない限り、

中国の若い世代の喫煙率は永久に増え続けることになるでしょう。

とはいうものの、シリアスな映画の場面で突然タバコの代わりに飴や

ガムが出てきたら青少年が憧れるどころか拍子抜けするであろうことは

容易に想像が付きます。年齢層を問わず「憧れ」「面子=メンツ」という

キーワードが禁煙にはとても重要ですので、広告やメディアの力をフルに

活用し、禁煙はファッショナブルで時代の最先端である、という共通認識を

都市部だけでなく国内のすみずみまで浸透させることがタバコ問題の根本的

解決には一番効果的であると思います。

実際はもう一つ、中国の禁煙推進運動がなかなか進まない最大の理由が

あるのですが、そちらは弊社ニュースレター・ノーカット版にて

詳しくお届けさせていただきます。

 

※特集記事の内容はあくまでも筆者個人の私見であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

※記事の著作権は筆者及び筆者の所属先に属するものであり、

 無断転載は固くお断りします。

バックナンバー 社員の日記 2015年4月号

◇◇◇()新入社員の日記 2015年4月号(前編)◇◇◇ 

 

風邪を限界までこじらせ気管支炎を併発、1ヶ月以上かけてようやく

完治した矢先、先週またのどの細菌感染を起こし心身ともに弱り切った

Sでございます。どのくらい弱ってるかというと、「輝」という字を

「褌(ふんどし)」と読み間違えて「最近また妙なものが流行ってるな」と

しばらく悩んでいたほど深刻な事態に発展しています。

私は子供の頃より季節の変わり目に指の皮が剥けるので、アザラシが

冬毛から夏毛に生え変わるようなものだと思っていたのですが、

アザラシの衣替えはせいぜい1ヶ月間のイベントです。今回は手も風邪の

症状も2ヶ月近く続いており、病院に数回通ったところ免疫力が大幅に

低下していたことが発覚しました。おかげで日頃の行動はボロボロで、

ここ最近の行動の中からワースト3を挙げますと

3、ペットボトルの蓋をしたまま中身を必死に飲もうとしており、

  見ず知らずの中国人から

  『あんた、大丈夫か?』「は?」

  『蓋!』「蓋が何だって?」『蓋だよ!』と心配される。

2、個別包装のキャンディを袋ごと口に入れ「また不良品か・・・」と

 しばらく気づかない。(注:ささやかな異物混入や何をどうやっても

 はがれない包み紙にはよく遭遇します)

3、おやつの亀ゼリーをストロー2本を箸のように使い食べており、

 その後「箸じゃない」と気づいた瞬間にゼリーが突然つかめなくなる。

など、いつまでも起動中のPCのようなひどい有様でした。

ちなみに亀ゼリーとは龟苓膏(グイリンガオ)のことで、香港や広東地方で

ポピュラーな薬草臭いゼリーです。中国の方の中でも好き嫌いがはっきり

分かれますが、私はこれが大好物で、高級店の本格ゼリーより3個1パックの

スーパーの廉価品のほうが苦味がマイルドでおいしいです。

ゼリーは固さがあり、箸でもなんとか食べられるのですが、その日はぼんやり

しすぎてストローで食べておりました。人生三十数年目にして無意識だと

結構器用なことが判明しましたが、普段は意識があるので結局何の役にも

立ちません。今年の上海は春が短く冬から直接梅雨に突入しそうな気配、

細菌感染や風邪が大流行しておりますので皆様お体だけはくれぐれも

ご自愛ください。気休め程度にビタミン剤などを胃に流し込みつつ、

今月も最新のニュースをお届けします!

 

■某月某日 美容院と中国の日常における与信管理の重要性 

 

海外に何年も滞在するにあたり、ついうっかり見落としがちな大きな

問題があります。そうです。美容院です。美容院は間違いなく生活の必須

インフラです。洋服や化粧などは家に帰って着替えたりやりなおしたりと

随時微調整がききますが、髪形だけは一度失敗したが最後、その後数ヶ月は

修正のしようがなく、しかも自分で直す術もありません。その上髪型が

第一印象に占める割合はとても大きく、その場のノリで冒険をすると

その後の人間関係や社会生活が文字通り冒険そのものになるような年齢を

迎えてしまったので、美容院と美容師の選択には細心の注意を要します。

幸い、上海の美容院はあまりにも安価なローカル店を除き比較的安定した

技量のお店がそろっており、カラーもパーマも一通り日本とほぼ同じ施術が

可能です。日系の美容院もずいぶんありますが、言葉が通じないリスクを

逆手に取って「カット500元(=10,000円)」などという奇妙な価格設定を

している店が多数のため、選択肢には入れません。言葉のリスクなど

その後3ヶ月から半年気に入らない髪形で過ごすリスクに比べれば取るに

足らない障害、そもそも髪型に関しては母国語で日本人同士会話をしていても

理想の仕上がりになるかどうかは“美容師の技量・自分のイメージの表現力・

髪質・運”の四要素によるルーレットの結果次第、ダメな時は結局ダメなので、

この際言葉はあまり大きな問題ではありません。

「医師と美容師は絶対に地元中国の人しか指名しない」と固く心に

決めている私がここ数年通っているのは自宅の近所のお店です。

美容師を指名しカット・カラー・パーマなど希望の施術をカウンセリングで

決めていくところは日本の美容院と同じですが、その営業形態は

大きく異なります。まず一番違うのがお店のサービス内容です。

店舗規模にもよりますが、こちらの美容院にはネイリストやマッサージ師が

常駐していることが多く、髪を切っている間に同時進行でマニュキュアと

ペディキュアが完成します。これは本当に便利です。唯一の難点は2人の

ネイリストに手と足を、美容師に首から上を、と合計3点が固定されるので、

少しでも動くと3人のうち誰かからすかさず

「前髪を切るから正面を向いて!」『はいわかりました』

「足が乾くまで動かしちゃダメ!」『はいすいません』

「手が乾いてないからお茶はまだ飲まないで!」『ごめんなさい』

と厳しいダメ出しをされることです。ふと鏡を見ると、人間というよりは

むしろ“トリマーに毛を刈られている犬”という形容がふさわしい、

なすがままにされている自分と目が合います。中国系のお店はシャンプーに

「干洗」「湿洗」の二種類があります。干洗は通常の会話では

クリーニング店の“ドライクリーニング”を指す中国語なので初めて

この言葉を聞いたときは有機溶剤でごしごし洗われるのかと内心震え上がり

ましたが、実際の干洗は椅子に座ったまま座席でシャンプーを泡立て、

流すときだけシャンプーボウルを併設した座席に移動するスタイル、

湿洗は日本と同様に最初から寝そべって洗ってもらうスタイルです。

中国ではなぜか干洗の方がポピュラーですが、顔や首筋に泡を落とさない

職人技の使い手がひしめいており、「これだけ器用な人が多いと“シャンプー

ハット”は売れないだろうな」などと場違いなことを毎回考えます。

その後は肩もみと耳かきが付き、日本よりお得感が高いサービスです。

他にも子連れの人が来たら(手が空いているスタッフがいれば)子供と

遊んでくれる、タブレットPCを貸してくれる、ひもじそうにしていると

おやつを分けてくれる、買い物帰りに寄ると冷蔵庫を使わせてくれるなど

様々なサービスがあります。後者2つはサービスというよりはたまたま

私がそういう情況に陥っていただけなのですが、相当融通が効くことは

確かなので何でもとりあえず口に出してみるのが吉です。

これだけのサービスを提供しながら価格は比較的リーズナブルでまさに

至れり尽くせりですが、そんな中国の美容院にも一つだけ難点があります。

一体何なのでしょうか。詳細は後半、ニュースレターの最後へ!

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◇◇◇連載 ()新入社員の日記 2015年4月号(後編)◇◇◇

 

商習慣の違う中国における業務でぶつかる壁の中でも “与信管理”は

キャッシュフローや収益に直結する非常に重要かつ深刻な悩みです。

形式的に外部機構から信用調査資料を購入し、稟議書を書き決裁を仰ぐ、

という従来型のリスクヘッジには限界があります。国を問わず裏帳簿を有する

企業など世界中にありふれており、資料の信憑性がまず疑われます。

その上どんなに資料を分析したところで相手に夜逃げでもされたらおしまいです。

与信枠の設定に“確実・絶対”などという概念はなく、そのため中国では

前払いや手付金の支払いが習慣として企業から個人の取引に至るまで浸透して

います。上層部の決裁を待って石橋を叩いて壊すより、稟議を上げる時間を

相手との支払い条件交渉に費やしたほうがより柔軟且つ迅速に商談も

まとまるでしょう。と、ここまではあくまで業務の上での話です。

仕事の時間に与信管理を実施するのはまぁ仕方がない。

しかし、日常生活のあらゆる場面においても与信管理を求められるのが

上海の現状です。

「もう一人拾うの?じゃあここで待ってるから、手付けで30元払って!」

というタクシーの運転手がそのまま走り去らないとは限りません。

自分が損をしない金額、即ち運転手の方が損をする金額になるまで交渉

しなければなりません。更に「じゃあ先に払っといて!明日入荷するから

取りにおいで」という街の雑貨店が翌日サラ地になっていないとも限りません。

誰がそんなもの払うでしょう。一回で完了する取引はこのようにその場の

判断が求められますが、概ね少額で後腐れのない関係なので悩むことは

ありません。問題は何度も利用するサービス施設の“プリペイドカード”です。

何が問題なのでしょうか。

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クリーニング店からネイルサロン、マッサージ店や美容院、パン屋や

レストランに至るまで、当地ではプリペイドカード形式の決済がとても

盛んです。後半の冒頭で散々与信管理について触れたところから皆様ご想像

いただけると思いますが、これらのプリペイドカードは“その店が長期間

潰れない”という前提で購入しないと後々大損することになります。

「そんなカードを誰が買うのか」という疑問が当然わいてきますが、

実はここにトリックがあり、プリペイドカードは購入金額に基づき

その後の消費に割引きが適用されます。例を挙げてみましょう。

私は通っている美容院の5,000元のカードを購入しています。そのため

シャンプー、カット、美容師の指名料はじめマッサージやネイルなど店の

全メニューに50%の割引きが適用され、実質10,000元分使える計算になります。

1,000元のカードは10%オフ、3,000元は20%オフなど割引率はカードの値段に

より異なります。従ってこの美容院に対する与信管理は

「店が長期間潰れないか」という予測の難しい要素だけでなく、

もっと具体的に「有効期限までの数年間店が持ちこたえ、かつその年数内に

実質10,000元分使いきれるか」を考えればよく、難易度は若干下がります。

その他美容師の転職リスクやメニューの値上げリスクなども考慮し、

自分のサイフ事情や利用頻度などと合わせて検討するので、担当の美容師が

待遇に満足しているか、店の経営はどうか、オーナーとの関係や社員の

入れ替わりはどうかなどをカット中の会話からさぐりつつ消費計画と次回の

購入金額を決定します。美容院で黙って髪を切られている人が少ないのには

このような背景があり、もちろん口数の多さには個人差がありますが、

ほとんどの人が必ず経営状況に関する質問は口にしています。

何度もご紹介しているように中国ではお金の話がタブーではないので、

聞かれる方も仲良くなればお店の賃料まで教えてくれます。

しかしテナントの回転が早い上海、カードの残額を残したままお店が潰れる

ケースは相変わらず後を絶ちません。私は9年前に当時利用していた

クリーニング店が潰れ、25元(500円)残っていたカードの残額を

取り戻すためチェーン店管轄本社に電話したところ

「申し訳ありません。お返ししすので本社までお越し下さい」と言われた

にも関わらず、往復の交通費の方が高いのであきらめた経緯があります。

今回、この日記を書くにあたって中国に十数年間滞在している同僚に話した

ところ「『じゃあ行くからタクシー代を出せ』と言えばよかったのに」と

言われ、その手があったかと感動する自分と、500円にそこまで神経使うのは

嫌だと拒絶する自分に挟まれ、精神的に疲れました。冒頭のとおり、

与信枠の設定に“確実・絶対”などという概念はありませんので、自分の勘と

得た情報を信じて日々を乗り切ると同時に、

「このくらいの金額までは損が出てもあきらめる」と足切りラインの

目安を決めておくのが得策かと思います。ふと、ここで

「どうせ似たようなシュミレーションが必要なら株でも買っておけばよかった」

とようやく思い立ったのですが、ここ数年で最高だった上海の株価は数週間前に

一段落してしまっており、何でも後から気が付くような人間に市場の

トレンドが読めるとは思えませんのでおとなしくやめておきます。

 

※日記の記事の内容はあくまでも筆者個人の体験であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

※記事の著作権は筆者及び筆者の所属先に属するものであり、

 無断転載は固くお断りします。

 

バックナンバー “上海 勝手にレストラン・バー・他アワード!” 2015年3月号

“上海 勝手にレストラン・バー他アワード! 2015年3月号

 

このコーナーは、独断と偏見に基づき、お店の許可も一切取らず

社員が文字通り「勝手に」ステキなお店をご紹介する場です。

八回目、カタカナによる外来語の威力にいつも驚いているSがお届けします。

日本語の中でカタカナ表記される外来語は目立つので、同じものでも

「カタカナで記載すると舶来モノの香りが漂いカッコよくなる」という効果が

あります。特にヨーロッパ系言語の威力は絶大で、『本日のアミューズ・

ブッシュです』などと聞くとたとえそれがサーモンの切れ端であっても

前菜の前のワクワク感が加速されます。私の週末の昼食も“フゥン・トゥン・

ミェン”とカタカナで記すと途端に高級オリエンタル・キュイジーヌの相を

呈してくるから不思議です。実物は何のことはない“ワンタン麺”です。

やはり中華は漢字表記が一番だと思います。

さて、上海には各国租界時代のレシピに基づくパンや洋菓子の老舗が多々

ありますが、外国語の表記には色々と落とし穴もあり、洋菓子を漢字表記

した結果、元が何だったのか分からなくなる例も多々あります。

ましてや上海語となると状況は更に混乱します。

意外なことに、上海語には文字がありません(※諸説あり)。

現在使用している漢字も表記はほぼ「当て字」、文法は基本的に現代中国語と

同じですが、発音や単語の学習は「口伝」以外方法がありません。そのため

私は上海語は概ね聞き取れるものの一言も話せません。今回はそんな

“名前は読めないけどおいしい洋菓子”を取り扱っている老舗をご紹介します。

『とうとうレストランでもバーでもなくなった・・・』

『やっぱりコンセプトが迷子に・・・』

とお思いの方、ご心配は無用です。例によってまたタイトルを少し変えれば

いいだけです。今月のタイトルを目を凝らしてもう一度ご覧ください。

中国で心を健やかに保つコツは如何なるツッコミを受けても

「過去は捨てろ!大切なのは今だ!」

と真顔で相手に返し、自分もそう信じることです。

旧フランス租界、各国領事館や図書館にも近く、冒頭でご紹介の林氏も

かつて住んでいた上海屈指の“Posh-end”にある名店はこちらです。

 

申申面包店

住所:復興路8

電話:02164373493

 

日系、韓国系、ヨーロッパ系など様々なお店が入り乱れるベーカリー

激戦区の上海においてこちらのお店はその外観もパンも目を疑うほどに

素朴ですが、かつて全盛期の上海ではパン・洋菓子の人気を競合

“静安面包房(こちらは今も多数店舗あり)”と二分した名店、数店舗しか

ないにも関わらず2015年3月放送のTV番組でも地元の人気ベーカリー投票の

2位にランクインしています。

特徴は良心的価格と昔ながらの伝統のレシピです。

味は日本や現代の欧米のパンに慣れていると若干物足りなく思えますが、

この味こそが1920年代~30年代に初代フランス人オーナーが持ち込んだ

当時のヨーロッパのレシピそのものの味だそうです。ここでの一番のお勧めは

上海語で「哈斗(発音はカタカナ表記不可)」と呼ばれるエクレアです。

哈斗は他の老舗ベーカリーでも販売がありますが、ここの哈斗はとにかく

巨大です。どのくらい巨大かというと、初めて見た際『何コレ?草鞋?』と

思わず日本語でつぶやいたほど、普通のエクレアの2-3本分あり、

外見に反してやさしい甘さが特徴。有名パティシエの作るきらびやかな

ケーキがいくらでも手に入る現在、往時の様子を忠実に再現する哈斗は

もはや無形文化財と呼んでもよいかもしれません。

ところで今回、何故写真がないのかと申しますと、肝心の哈斗が買えなかった

からです。この店はまだよい方ですが、上海のケーキの名店“紅宝石”や

元祖ロシア風洋菓子の“哈尔滨食品厂”などチェーン展開の老舗は昼間に

高齢者が在庫をすべて買い占めるため人気商品は夕方や夜に行くとほぼ

売り切れ、昼は昼で店が大混雑します。

買い物の際には『おねーさん!おねーさん!こっちこっち!』と

カウンター越しの店員にプロのナンパ師や路上のキャッチセールスも青くなる

ほどの決死のアピールが必須、必要に応じて上海語話者の助けを借りるなど、

狩りの心構えでお出かけください。

 

※記事の内容はあくまでも推薦者個人の見解であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

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 無断転載は固くお断りします。

バックナンバー 中国最新情報 “中国飲食業界の女王の没落!” 2015年3月号

中国最新情報 “中国飲食業界の女王の没落!” 2015年3月号

 

上海では日本及び諸外国で所謂「セレブリティ」と呼ばれる方々に遭遇する

機会が多々あります。中国はTV番組の司会者が日本で言うタレントに

該当しますが、これらのタレントやアナウンサー、モデルなどは街中で

しょっちゅう見かけます。ワイタンのレストランに行くと隣のテーブルが

「台湾の某有名男性歌手だった」などということは非常によくありますが、

これらの方々はまだまだ“軽量級”ともいえるセレブの方で、“重量級”になると

欧米の本物のセレブが意外なところをうろうろしています。

私が直に遭遇した例はいずれも同じホテルでの出来事ですが、

「ものすごく細身の女性がいると思ったらアンジェリーナ・ジョリー氏だった」、

「恐ろしくファッショナブルな男性が隣席でもそもそパスタを食べて

 いると思ったらラポ・エルカーン氏だった」、

そしてちょうど先週末

「ルーフトップバーにどこかで見た男性がいると思ったらベネディクト・

 カンバーバッジ氏だった」

等々です。いずれも常にパパラッチに付きまとわれる有名人ですが、

重厚感が売りのそのホテルでは彼らを囲んだり話しかけたりする人は

一人もおらず、一方の私は芸能関係に疎いので、俳優ご本人を目の前に

しても「あぁ、彼らも生身の人間だったんだ」とぼんやりした感想しか

浮かばないといった情けなさでした。

さて、このクラスの有名人に遭遇する機会はさすがに珍しいのですが、

世間で話題の企業家や富豪の子女などはそれこそそこら中で見掛けます。

今回はとあるニュースをきっかけに数年前に著名企業家のご子息を

某ブランド店で見かけたケースを突如思い出しました。

というわけで今回はいつもと趣向を変えて、

飲食業界の最新ニュースをお届けします。

前半しばらく本題とは無関係な話が続きますが最後まで

お読みいただければ幸いです。

 

  • 中国飲食業界 かつての新星・俏江南(チャオジャンナン)とは?

 

今を遡ること4年前、2011年のことです。南京西路には今年の3月から

移転のため閉鎖されている「トム・フォード」の路面店があり、当時は

ローンチ後まだ間もなく、アジア圏最大の店舗であったことから様々な

人が訪れておりました。その日、私は店のソファーでお茶を飲みながら

店員とだらだら話をしていたのですが、突如、入り口から上海では珍しい

強烈な北京訛りの中国語が聞こえると同時に痩せ型の若い男性がお店に

現れました。スーツからバッグ、靴に至るまでトム・フォードの最新の

コレクションを身に着けたその男性、どこかで見覚えがあるものの、

芸能人ではないその人の名前が思い出せずもやもやしつつも、驚くほど

横柄な振る舞いや店の前に停めて(当然、違法)あるカエル色(黄緑)の

ポルシェから彼が中国語で裕福なニュー・リッチ層の親のお金を湯水の

如く使う子女を指す「富二代」であることは容易に察しがつきました。

ちょっと古いですがパリス・ヒルトン氏などをご想像いただければ

その生態が大体お分かりいただけるかと思います。正直なところ、

バブルの上海では富二代はそれこそ星の数ほど存在するのですが、

何故その日の出来事だけよく覚えているかというと、彼が売り物のトロリー

バッグを指さし「那个拉杆箱是几位数啊?」と商品をよく見もせずに

聞いたからです。日本語に訳すと「あのバッグ、(値段は)何ケタ?」です。

富豪は金額をケタ数で認識する。世界は広いと実感した瞬間でした。

結局お気に召さなかったのか何も買わず彼は店を去りましたが、店員は

複雑な面持ちで

「すごくいい皮を使っているのでせめて値段だけじゃなく商品も見て

欲しいんですが・・・」

とこぼしていました。ますます一体誰なのか気になったところで

試着室から顔だけ出し一部始終を見ていた夫が一言

「あれ、俏江南の汪小菲(ワンシャオフェイ)じゃないか?」。

 

四川料理を現代風にアレンジし、かつて中国全土に高級店舗チェーン

展開していた企業、それが「俏江南(チャオジャンナン)」です。

とにかく急激に店舗数を増やし一躍飲食業界のスターとなっただけでも

話題性は十分なのですが、俏江南グループの目玉といえばなんと言っても

桁外れな高級レストラン、北京と上海の「LANクラブ(蘭)」でしょう。

北京の本店はかのデザイン界の寵児フィリップ・スタルクを1,200万元

(≒2.3億円)で招聘し、さらに日本円にして数十億円の費用を投じて

オリエンタルな高級複合レストランを建設。一つ数十万円もするバカラの

クリスタルのシャンデリアを惜しげもなく天井から大量に吊るし、すでに

飲食店の枠を超えているコストから「美術館でも作る気か!」と当時

ずいぶん報道されましたが、いざ出来上がったレストランが美術館以上の

豪華さで更に話題を呼びました。

また上海ではワイタン地区の重要文化財指定の洋館を一棟丸ごと占拠し、

クラブ、中華、フレンチの3つの飲食店を展開。

こちらは北京にくらべ簡素なもの地価は北京の比ではなく、内装も

フレンチレストランには壁一面にびっしりと蝶の標本が飾られ、

食器にはあの「Forna Setti」を使用。内装やサービス、料理の質を考えると

日本円で1万数千円というフレンチのコースは信じられないほど

リーズナブルであり、自他共に認めるForna Settiマニアの私は財布の

激痛と戦いながら足しげく通い詰めておりました。

そんな破天荒な経営スタイルが注目を集める俏江南ですが、本当の

話題の中心はそのファウンダーである女性企業家、張蘭氏です。

北京の飲食店からそのキャリアをスタートし、カナダで必死に皿洗いの

アルバイトをして溜めたわずか2万ドルを元手にのし上がった彼女の華麗な

サクセス・ストーリーは下記中国語の紹介ページに詳細をゆずります。

http://baike.baidu.com/link?url=ofT_7tqcNS2OnnvPZjnNfCk69qhVdVnuaNLDCXgZ1wV_o4pfK_JByL2oqEhTNfvSoUxvBbXAMqr3VrkoyCXECYkHbRCFpNms-uqpLMzIE5W

 

前述の汪小菲氏は張蘭氏の一人息子です

(中国は夫婦別姓のため名字が異なります)。

日本よりずっと女性が社会に進出している中国では「女性取締役」

「女性銀行支店長」「女性企業家」などは全く珍しくありませんが、

無一文からこれだけの規模まで事業を育てかつ

「息子も一人で育てたシングルマザー」

という話題性を有する方は大変まれで、全盛期は経済番組からニュースに

まで、張蘭氏はまさにひっぱりだこでした。そんな張氏の快進撃に陰りが

見え始めたのは折りしも私がお店で息子の氏を見かけた2011年。

氏は当時台湾の有名女優との結婚が決まり芸能レポーターから

追いかけられておりましたが、同時期に母である張氏は

「投資元のベンチャー・キャピタル(以下、VCと記載)とモメている」

「香港での株式上場の計画が滞っている」

と連日テレビで取り上げられておりました。上海のLANクラブに突然、

ステーキを焦がすようなミスが目立ち始め、ふらりと立ち寄ると私の

テーブル以外誰もおらず貸切だったり、かと思うと“团购=割引クーポン

共同購入”の安価なメニューを突如宣伝し始めたり、と様子がおかしく

なってきたのもその頃です。その後、いつの間にかお店はクローズされ、

飲食店の移り変わりの激しい上海で私がLANクラブを思い出すことも

ほぼなくなっていましたが、先月衝撃的なニュースが耳に飛び込んできました。

一体どんなニュースだったのでしょうか。

 

  • Beauty No More, 俏江南と張蘭氏への資産凍結命令

 

昨月、不吉なウワサの続いていた俏江南についての衝撃的な報道が

発表されました。

 

2015年3月6日、CVCキャピタル(以下、CVCと記載)は香港の法廷より

張蘭氏及び他2名の被告、即ちCVC CapitalGrand Lan Holdings Group (BVI)

Limited及びSouth Beauty Development Limited(=俏江南发展有限公司)の

個人資産凍結の通知を受け取ったとファイナンシャルタイムズ紙が報じた。

(2015年3月25日 ForbesのWebサイトより)

http://www.forbes.com/sites/ywang/2015/03/25/beauty-no-more-assets-of-chinese-restaurateur-frozen-over-dispute-with-cvc/

 

つい3年前、ファウンダー張氏自ら「毎年100店舗を新規にオープン」

「俏江南を飲食業界のルイ・ヴィトンにする」「俏江南を世界500強企業に」

と壮大な計画を掲げていたにも関わらずこの急展開にはいったいどのような

背景があったのか、まずは経緯を時間軸で追ってみます。

 

2008年 店舗網拡張計画の時期に金融危機(リーマン・ショック)が発生。

2011年 中国国内(A株)への上場を試みるも失敗。

2012年 年末より中央政府の反・腐敗運動が始まる。中央の“八つの規定”

    “六つの禁令”の衝撃を受け、飲食業は未曾有の危機に追い込まれ、

    20年以来の不景気を迎える。

    また、この時期香港での上場にチャレンジするも再び失敗。

    偶然張氏が上場のため中国国籍を放棄し移民していたことが明らかに

    なり、国内から一斉に批判を浴びる。

2013年 俏江南の資金が切迫し、毎年オープンする新店舗はたった10軒に

    とどまる。同年、全国で13店舗を閉店。

2014年 CVCが俏江南の株式の83%(69%説もあり)を取得、

    ファウンダーの張氏は大株主の地位を失う。

    同年、さらに8店舗を閉店。

2015年 資産凍結命令。

http://bond.hexun.com/2015-03-22/174285521.html?from=rss

(2015年3月22日 和訊網の記事を元に時系列を整理)

 

上述の記事の一節に“张兰总在关键节点摔跤”(張氏は肝心なポイントで毎回

コケる)とあるように、全ての行動が社会情勢の動きに対し裏目に出ている

印象が否めません。そもそも2011年の段階で張氏は投資者との関係をだいぶ

こじらせており、長くなるので詳細は記しませんがリターンを約束する

契約書にサインをしておきながら「言った・言わない」の争いを

メディア上で繰り広げ、挙句「VC(ベンチャー)の投資を受けたことは

失敗だった!」と発言し、顰蹙を買っていたのを私も明確に記憶しています。

また、この件に留まらず張氏はその派手で強気な発言から業界内でも

反感を持つ同業者が多く、それに加え息子の汪氏が各地で散財し

遊びまわっている様子が批判的に捉えられていたという背景があります。

2011年の上場失敗も以前からあった悪評の影響と無縁ではないでしょう。

そんな中、まさに晴天の霹靂ともいえる「反腐敗運動」の勃発。

こちらについては本ニュースレターでもたびたび取り上げておりました

ので詳細の説明は省略しますが、まさに誰も予想しえなかった業界への

大打撃といえます。摘発を恐れて公務員は一斉に会所(フイスオ=クラブ)

に出入りしなくなり、その筆頭格であったLANクラブは2012年に

資金繰りの改善のため売却されました。

CVCが新たに大株主となった旨正式にリリースしたのは2014年ですが、

実はこの合意は2012年の反腐敗運動の開始前になされたものであり、

商務部の承認という非常に時間がかかる手続きを踏んでいる間に景気が

一転してしまうという不幸が重なった事例ともいえます。

 

香港の裁判官Andrew Chung氏はこの論争の原因については明かさな

かったが、「巨額の資金がCVCから支払われているが、

これら資金・・・資金ももちろんそうだが、流動性の高い資産(Liquid form

of asset)が現在どこにあるのか未だ明かされていない。」とコメントした。

http://www.ftchinese.com/story/001061159/ce

(2015年3月20日 中国版ファイナンシャル・タイムズ)

 

流動資産がどこへ消えているのか真相はナゾですが、2015年の現在は汚職後

海外へ逃げた政府の高官すら連れ戻され投獄されるご時世です。

国籍変更程度で安全は保障されません。

結果的には「市場の傾向を読み誤った」、あるいは「反・腐敗運動の犠牲者」

とも取ることができるケースではあるのですが、全盛期の汪氏のリアルな

散財ぶりを目の当たりにした個人的経験からか、どうしても頭に浮かぶのは

「驕れる者は久しからず」の一節です。また、張氏がもう少し各方面に

対して当たりの柔らかい人であれば、早期撤退や事業再建の可能性も

ゼロではなかったのではないかと思うと、中国のビジネスの核となる

「コネクション」の重要さを再認識させられます。

実際はコネクションがあってもどうにもならない件も存在し、まさに

その大騒動で閉鎖に追い込まれたレストランが上海の巷をにぎわせて

いますが、そちらの詳細についてはデリケートな内容のため

弊社ニュースレターの“ノーカット版”のみでお伝えすることとし、

『人にやさしく』『笑顔・挨拶』と念仏のように心のうちで唱えながら

今回の結びとさせていただきます。

 

※特集記事の内容はあくまでも筆者個人の私見であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

※記事の著作権は筆者及び筆者の所属先に属するものであり、

 無断転載は固くお断りします。

バックナンバー 社員の日記 2015年3月号

◇◇◇()新入社員の日記 2015年3月号(前編)◇◇◇ 

 

No music, No lifeとまでは行かなくとも音楽は日常生活に欠かせない

Sでございます。私は壊滅的に音楽の才能がなく、楽器という楽器に

縁がありません。まず楽譜が読めません。しかしダンスは大好きで、

約30年ほど前の東京の某地区では「盆踊りあらし」と呼ばれる

幼児の目撃情報が相次いだそうです。

車上あらしの一派ではありません。私のことです。

その後は中・高一貫校のダンス部に入り、厳しさとは無縁の自由な部活で

ひたすら音楽を聞いておりました。肝心の学業の結果はお察し下さい。

そんな背景から上海に移住後も街中やテレビから流れてくる音楽には大変

興味をそそられます。中国の音楽シーンは予想よりはるかに多種多様です。

我々日本人を含む外国人はいまだに伝統的な民族音楽を想像しがちですが、

実際はプッチーニの「トゥーランドット」やクライスラーの「中国の太鼓」を

想像していたら突然、舞台でフリースタイルのラップが始まったくらいの

違いがあります。余談ですが中国国内はもちろん、台湾やシンガポールを

含む中国語圏には中国語ラップを歌う著名な歌手が多数存在しており、

中国語とラップの相性の良さをつくづく実感します。

社会情勢や歴史ではなく日常生活を題材にした歌詞であっても韻を踏む、

対句を配置するといった漢詩の伝統が息づいているように思います。

漢詩も元々は曲が付いていたそうですので、もし杜甫が現代に生きていたら

世の不条理をぶった斬るさぞかし骨太な社会派ラップが生まれていたで

あろうと思うと少し残念です。

さて、何故今回唐突に音楽の話が始まったかと申しますと、2015年3月、

上海の音楽シーンに欠かせなかった「Charlie Lin(林)」氏がお亡くなりに

なったからです。上海は街の代名詞にもなっているとおりジャズが大変

盛んな街ですが、その全盛期は1920~30年代です。上海語で“老克拉”

(上海語発音:ロッ・カラ)と呼ばれるこの時代の紳士階級はぴかぴかに

磨いた革靴、テーラーメイドのスーツを着込み、最新の輸入車を乗り回して

毎晩、和平飯店や国際飯店といった高級ホテルや租界にある自宅の洋館で

華やかなパーティーを繰り広げていました。

アメリカの「The Great Gatsby」の世界を更にヨーロッパ風にした生活

スタイルを思い浮かべていただければほぼ間違いありません。

コカコーラを「可口可乐」と訳した“中国広告の父”の息子として非常に

裕福な幼少時代を過ごした林氏はアメリカン・スクールで幼少期を過ごし

その後留学、モーターボートや競馬、そして音楽をこよなく愛した“老克拉”の

代表人物であり、単なる「成金」とは一線を画す教養・お金・品の全てを

兼ね備えた本物の富裕層です。革命期は香港に逃れ難を避け、

その後ラジオの名物DJとして所蔵していた数万枚のレコードから

ジャスの黄金期の名曲を紹介していました。1990年代から新しく

スタートした「怀旧金曲」という番組は上海でも絶大な人気を誇って

おり、私もリスナーの一人でした。3月 8日に林氏が亡くなった後も当分

番組は続けられるそうで、車のラジオから当時の上海へタイムスリップ

したかのような素晴らしい曲が流れてきます。まだまだ運転マナーに

改善の余地が大いにある上海、心がすさみがちなドライブ中の爽やかな

清涼剤です。林氏のご冥福を心よりお祈りしつつ、

今月も最新のニュースをお届けします!

 

■某月某日  長引く風邪 不毛な争いと伝統療法

 

上海も3月の末からようやく暖かくなってまいりました。上海は人間の

風邪耐性を試すため特別にデザインされた箱庭なのではないかと思うほど

気候の変化が激しく、春と秋がほとんどありません。とにかく湿度が

高いので湿気で指先まで凍える真冬と、熱中症が続出する真夏の

どちらかが延々と続き、季節の変わり目は1日単位で気温が十数度以上

上下します。現在はまさにその気温のジェットコースター期間にあたり、

本来天気予報を見てから翌日何を着るか決めるべきなのですが、上海の

天気予報はアテにならず、湿度が高くなると広がる私の髪のほうが

天気予報よりよほど正確で「あっ、今日髪のカールが取れてるから雨だね!」

と地元の知人からはセンサー扱いされています。多少なりとも地域に

貢献できて光栄です。今年は特に異常気象で嫌な予感がしていましたが、

案の定まんまと風邪を引き、清明節(日本のお盆に相当)の3連休は

自宅から一歩も出ず、高熱を出して震えておりました。

さて、海外で風邪を引いた場合、本来は病院へ駆け込むのが一番の

得策ではあるのですが、過去の日記でもご紹介申し上げたとおり中国の

病院は面倒でどうしても足が遠のきます。

また、こちらでは金儲けを目的とした不必要な点滴の処方が社会問題に

なっており、何かにつけて「食塩水の点滴」「ブドウ糖の点滴」を強要され、

2-3時間を無駄にすることになります。よほど胃が弱っているので

なければ自宅でスポーツドリンクでも飲んだ方が安くて早くて簡単です。

というわけで残る選択肢はただ一つ、街中の薬局です。

中国の薬局は日本の“ドラッグストア”のイメージとは異なり、化粧品や

日用品は置いておらず、純粋に薬だけを販売しており、一部処方箋窓口を

兼ねていることもあります。自分で商品を手に取ってみることはできず、

大まかな症状を店員に訴え、候補の薬を出してもらい、異論がない場合は

購入にいたります。何故わざわざ「異論」と書いたかというと、好みの薬が

ある場合それをこちらから指定しないと、薬局にコミッションが入る

メーカーの薬を強制的に買わされる可能性が高いからです。

私が偏愛する某・総合感冒薬は過去「数箱分集めてある成分を抽出すると

麻薬を製造できる」との報道が出てから店頭で買うのが難しくなり、

入手するのが一苦労です。また、その感冒薬はあまり薬局にコミッションを

払う習慣がないようで、薬局で聞いても

「是感冒吗? 那吃泰诺好了. 效果蛮好的 (風邪?じゃあタイノールにしなさい。

 よく効くよ)」

「怎么不喜欢泰诺啊? 这不是很好嘛(どうして嫌いなの?いい薬じゃない)」

「一定要○○啊? (どうしても○○じゃなきゃダメ?)」

「…要几盒?(・・・いくつ要るの?)」

と押し問答をしてようやく店の奥からごそごそと取り出してもらうことも

しばしばです。ただでさえ風邪で弱っているところにたかが買い物一つに

時間がかかるとなると心身ともにダメージも大きいので、対策としては

近所の同じ薬局で続けて購入し、顔を覚えてもらうことが一番です。

何度か行くと次からは何も言わずとも自動的に箱がカウンターに出てきます。

いつもの店員がいないとまた1から押し問答のやり直しになりますが、

これは中国に限らず日本でも時間帯がズレて知らないアルバイトに

当たると行きつけのコンビニで箸を忘れられたりするのと同じです。

いかに“顔パス店”を増やすかが生活快適化のコツです。

さぁ、こうして薬は手に入りましたが、38度の熱が数日続いた今回の

風邪と戦うにあたり総合感冒薬だけでは心細く、もっと根本的な治療を

実施する必要があります。一体どんな治療なのでしょうか。

詳細は後半、ニュースレターの最後へ!

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◇◇◇()新入社員の日記 2015年3月号(後編)◇◇◇

 

風邪の時、薬よりも食料よりも一番ありがたいのは看病をしてくれる家族や

友人の存在です。飲み物や果物を買いに行ってくれたり、薬を飲む時間を

リマインドしてくれたり、そして何より体が弱って不安な時に傍についていて

くれることで心の平安を得ることができます。問題は、私の場合風邪を引く

ときはたいてい夫婦ともども同じタイミングで倒れることです。

今回も全く同じ症状で二人とも同時期に寝込んだため、

「看病をしてくれた側に感謝の念を抱く」

「“君/あなたがいてくれてよかった!”と改めて家族のありがたみを感じる」

などという心温まるホームドラマは上演されず、

「先に風邪を引いてきた方が悪い」

『いや、移される方の健康管理がなってない』

と水掛け論が勃発し、いかに自分の主張が正しいかのプレゼン合戦に発展。

互いに熱でぼんやりしており、普段は絶対にしないはずの外国人同士で

議論をする際のタブーである「我こそがコモン・センスの代弁者」という

視野の狭い主張を繰り返した挙句、その後羽根布団の取り合いを開始、

果てはどちらが食料の買出しに行くかで心理戦を展開し、最後は結局高熱で

二人ともダウンという不毛な争いを繰り返していたため、治るものも治らず

このニュースレターを書いている現在もいまだに不調をひきずっています。

人間最後に頼れるのは結局自分だけという大原則に立ちかえり、こういう時は

いろいろな情報を駆使して一刻も早く相手(夫)より先に回復するに限ります。

一体どうするのでしょうか。

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◇◇◇()新入社員の日記 2015年3月号(後編)◇◇◇

 

既に周知の事実ですが、ウイルスは種類があまりに多様なため現在の医学で

風邪を根本的に治療することはできないそうです。感冒薬は症状を緩和するため

だけのものなので、必要最低限の薬で熱や炎症を抑えつつ、一刻も早く菌や

毒素を対外に排出してしまうことこそが早期回復の鍵であり、水分の補給は

とても効果的です。おりしも時代はまさに“デトックス”ブーム。

中国語でデトックスはそのまま“排毒”と記されますが、こうしてまじまじと

漢字を見てみると不調の根本的原因は体内の不純物というより心に蓄積する

毒=ストレスであるという事実がよく見えてきます。ストレスは一刻も早く

発散すべきです。したがって皆様にも熱を出した際などは安静に過ごすより

特別な機会をフルに活用し、遠慮なくワガママを押し通し存分に鬱憤を

晴らされることをお勧めします。ただしこの方法は治った後にツケを払う

必要があること、相手が風邪を引いた際により強力なワガママの

“ブーメラン返し”をされること、ご家庭によっては風邪程度では逆転できない

ヒエラルキーがあることなど欠点もありますので、今後のご自身の立場や

情況を判断しくれぐれも慎重に実行ください。

また、私は今回、上に記載のとおりこき使いたい相手が共倒れしているので

おとなしくしているしかありません。しかし大量の水分でデトックスを促進

していても、どうしても排出できない毒素が溜まってしまう場合もあります。

そんな時こそ最後の手段、中国医学の力を借りるしかありません。

こちらでポピュラーな治療法に“拔火罐”というものがあります。

日本語では“カッピング”などと訳されるこの治療法では、プリンの容器大の

丸いガラス製の瓶の中を火をつけたアルコール綿などで炙って空気を追い出し、

中を真空状態にして身体に吸いつけていきます。背骨や肩、うなじのツボに

十数個吸い付け、横から見ると肉が球形に盛り上がるほど強く吸引されて

いるのですが、見た目に反して痛みはほとんどありません。これにより

体内の“寒気”を吸い出すそうです。痛々しい青紫色のまん丸の痣が背中に残り、

1週間程度は消えないので尻込みする外国人が多いのですが、長引く風邪、

特に止まらない咳には神秘的なまでの効果を発揮し、軽い風邪なら

すぐに治ります。施術後は毛穴が開き、身体が冷えやすいので1~2日入浴は

できませんが、痛みもなく手軽で病院に並ぶ必要もありません。指圧や

足ツボなどのマッサージのお店であればたいていどこでもメニューにあり、

費用も1,000円程度です。お手軽で効果も抜群なこの方法、カップが吸い付く

場所であれば背中に限らず体中どこでも施術可能です。私はかねてより

どうしても馬が合わない相手の両頬にカップを一個ずつ吸い付け、

丸い青痣ができたところで「あら、珍しい色のチークですこと」

と一週間笑ういやらせを考えておりましたが、今回再度カッピングを受け、

考えを改めました。咳は出ず、胃腸に来る風邪だったため施術者と相談し

お腹のツボに吸い付けたのですが、背中と違って思い切り誰かに

つねられているかのような痛みがあります。この違いは何なのか。

聞くと「肉が付いているところは痛いんですよ。背中は肉がないから痛みも

あまりないでしょう」。

じゃあ、お腹に脂肪のない人は痛くないのか。

「そうです。脂肪がなければ痛みもないですよ」。

なら、頬なんかさぞ痛いでしょうね。

「・・・そんなことする人はまずいませんが、痛いでしょうね」。

いやがらせが拷問になってはまずいので長年の計画は断念せざるを

えませんが、思わぬところで日頃の運動不足を指摘され、体調が悪い

ところに更にショックを受ける結果となりました。個人の贅肉事情は

さておき、やみくもに薬を飲むより副作用もずっと少ないので、

季節の変わり目の風邪で辛い思いをされている方は是非一度、

拔火罐をお試し下さい。

 

※日記の記事の内容はあくまでも筆者個人の体験であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

※記事の著作権は筆者及び筆者の所属先に属するものであり、

 無断転載は固くお断りします。

バックナンバー “上海 勝手にレストラン・アワード!” 2015年2月号

“上海 勝手にレストラン・アワード!” 2015年2月号

 

このコーナーは、独断と偏見に基づき、お店の許可も一切取らず

社員が文字通り「勝手に」ステキなお店をご紹介する場です。

七回目、胃炎にも冬の寒さにも負けず日々もりもり食べているSがお届けします。

前半の日記で肉・芋・でんぷんの三重奏のおいしい中国東北料理をご紹介して

おりますが、あらゆる料理を選び放題の上海でも似たような料理を食べられる

お店はたくさんあり、今回はその中からイギリスの家庭料理を提供する

レストランをご紹介したいと思います。

私は私用で1~2年に一度ロンドンを訪問しますが、そのたびに

イギリスの方は(もちろん、人にもよりますが)どうも“話にオチを

つけたがる方”が多く、シニカルを通り越した“自虐ネタ”に走る方も

非常に多いと実感します。特に私がゴッドマザーと慕う年配の友人は

その特長が顕著で、マーマレードジャムを塗りながら

「スペインで山のように取れる苦くて誰も食べないオレンジを、

 何を思ったんだか私たちのご先祖様はわざわざジャムにしたのよね」

と解説。その後すかさず

「その前に他の料理を何とかすればよかったのに」

とオチをつける徹底ぶり。

彼女のブラックユーモアはご紹介がためらわれるレベルのものも多く

詳細は書けませんが、何故突然彼女のことを思い出したかというと、

最近上海でお会いしたとあるイギリスの方が

『フィッシュ&チップスにはカレーのソースもお勧めです。

 プレートの上で大英帝国を再現!』

『・・・まぁ、今はもう歴史ですけど』

『うちの店の以外で一番おいしかったフィッシュ&チップス、

 どこのだと思います?』

『それが、日本なんですよ!六本木のお店なんですけどね、いやー、

一瞬自分がどこの国にいるのか分からなくなるような変な体験でした』

と一々話にオチがつく面白い人だったからです。

その方が経営するレストランがこちらです。

 

Mr.Harry

住所:南京西路819号开欣商厦5

電話:02162036511

 

海外の映画俳優なども時々訪れるというこのお店は、カジュアルな内装で

イギリスの伝統家庭料理を提供してくれます。ソーセージに山盛りの

マッシュポテトやおなじみサンデー・ローストなどメインもおいしいのですが、

個人的おすすめは「アップル・クランブル」です。

 

f:id:jpbd:20150701143312j:plain

(写真:アップル・クランブル。男性用の弁当箱サイズの巨大なポーションです。)

 

切り刻んだリンゴにクランブル=粉状のクッキーをふりかけオーブンで焼き、

あつあつのカスタードクリームをかけるこのデザートは私の大好物なのですが、

作り方が簡単な分微妙な加減がむずかしく、本当においしいお店は貴重である上、

本場の方にとっては「わざわざ店で食べるようなものではない」という認識

らしく、置いているお店自体が少ない幻のデザートです。

こちらのお店は『山盛りの量』『ぼそぼそしたクランブル』

『激甘カスタードクリーム』という3つのポイントを見事におさえ、

すばらしいできばえでサーブしてくれます。

「アップルクランブルがある!」「アップルクランブルは絶対に食べないと」

「クランブル・・・」と席に着くなりクランブル経を唱えはじめた私を

かわいそうに思ったのか、店を出る際に何故かオーナーが

『是非また来てください』とお駄賃(?)のショートブレッドをくれました。

2個だけ。まだまだ勉強不足ですがこれはきっと英国式ユーモアの一部

なんだろうと思います。市の繁華街ど真ん中、地下鉄にもアクセスしやすい

こちらのお店はメインは2人で分けても十分なほどのボリュームがありますので、

皆様お腹を空かせてお出かけください。

 

※記事の内容はあくまでも推薦者個人の見解であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

※記事の著作権は筆者及び筆者の所属先に属するものであり、

 無断転載は固くお断りします。

 

バックナンバー 中国最新情報“電子マネー”とアプリ普及の現状!” 2015年2月号

中国最新情報 “電子マネーとアプリ普及の現状!” 2015年2月号

 

今年の旧正月の期間、中国全土で最も話題を攫ったニュースは

「網絡紅包」即ち“オンラインで支払われる電子マネーのお年玉”です。

アリババ率いるオンライン決済サービス『支付宝』は“大晦日の指定時間に

ログインして携帯電話を振るとランダムな金額の電子マネーが当たる

大掛かりなイベントをしかけ、その結果大晦日の24時間内に全国で

6.8億人/回もの人々が何かに憑かれたようにひたすら携帯電話をシャカシャカと

振り続けるという異様な光景が見られることとなりました。 

ピーク時は毎分8.1億回、日本の総人口の6倍以上の人が一斉に携帯を

振っていた計算になります。より詳しい数字は下記記事よりご覧いただけます。

 

http://www.shfinancialnews.com/xww/2009jrb/node5019/node5036/node5037/userobject1ai141383.html

(2月27日 上海金融新聞網)

 

この様子は国内外のメディアにも動画で紹介されておりましたので、

報道をご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

当たる金額は数元からと少額であるものの

「TVを見るくらいしかすることがない大晦日の格好の暇つぶし」

「結婚はまだ?彼氏・彼女は?等鬱陶しい親戚の質問を回避する口実」

「何十回かに一回当たりが出ることによる中毒性」

「みんなでシャカシャカ振る一体感」

「中国(日本も同様)のおみくじのコンセプトとも一致」

というツボを的確におさえた

戦略で爆発的人気を引き起こし、また“振るだけ”という手軽さからいままで

親類の集まりで会話に参加せず画面に釘付けの子女や孫たちにいらいらして

いたお年寄りが今年は一緒にスマホを振って盛り上がるという前代未聞の

光景も見られ、もともと他国ユーザーよりスマホの操作に長けていた中国の

中高年層を大量にオンライン決済のアプリユーザーとして大量に引き込む

ことに成功していました。上述の記事によると支付宝の市場シェアは

現48.8%にも達するそうです。今回の特集では電子マネーにまつわる

2つのトピックについてご紹介します。

 

  • 赤の他人にお年玉!? 携帯電話と電子マネーの盲点

 

旧正月明けの出勤時、タクシーのラジオで丁度話題となっていた

電子マネーのお年玉が取り上げられておりました。

但し、これはEコマースがユーザーに向けて発する不特定多数向けの

お年玉ではなく、個人が個人にあてた本来の意味でのお年玉です。

年長者が年下の親類にあげる伝統的お年玉を電子マネーで振り込んだところ

あるトラブルが発生、被害者の女性が番組に生出演し事のあらましを

語っていました。

ラジオ番組の内容を以下、箇条書きにまとめます。

 

1、ある女性が携帯電話から「支付宝」を使用し、親戚の女の子に

 オンラインでお年玉1,000元を送金。

2、手続き完了後、画面に「“王鋼”(男性名、漢字は音から推測)に

 1,000元が振り込まれました」と表示され、あて先に心当たりがないので

 あわてて支付宝サービスカウンターに電話するも原因は不明、

 再三かけあって調査を依頼。

3、その後、本来お年玉を受け取るはずであった親戚の女の子の携帯電話が

 中古品として買ったものであり、最初の持ち主が“王鋼”氏であったことが

 判明。王鋼氏は携帯電話のキャリアにて電話番号との本人確認登録を実施

 しており、支付宝も同じ番号で過去に登録済み。親戚の女の子は

 SIMカードと端末をまとめて中古で購入した後、電話番号の本人登録を

 しておらず、キャリアのシステム上では現在も番号の持ち主は王鋼氏のまま。

 一方、支付宝の「振込み先一覧」は携帯電話のアドレス帳情報から

 インポートされるため、今回被害にあった女性は相手が別人とは知らず、

 親戚の名前を選択して振込みを実施。

4、女性は1,000元を取り戻すためあちこちに交渉したが、

  携帯電話キャリアは「弊社は通信キャリアなのでオンライン決済の

 トラブルまで責任は持てない」ともっともな回答。一方の支付宝もラジオに

 生出演し「弊社のシステムにまだ改善の余地があることは認めるが、

 アカウントを携帯電話番号で登録している以上、その番号の本人確認は

 済んでいるものと認識しており、今回の件についての責任は負えない」

 と回答。

5、被害者の女性、ラジオで「少額なので泣き寝入りするが、せめて

 振込み後ではなく振込み前の確認画面で“王鋼に振り込みますか?”と

 出ていれば・・・」とコメント。

(2015年2月26日 8:00~8:15頃のラジオ生放送の内容をメモに基づき翻訳)

 

3-4分の放送をメモも取らずに聞いていたので情報の漏れがあるかも

しれませんが、事件の全貌は概ねご理解いただけるかと思います。

支付宝では同じ携帯電話番号で2人の異なる人間のアカウントを作れるのか?

だとしたら過去に似たようなトラブルはなかったのか?など色々疑問が

残るので、今回の件は偶然が重なったとても珍しい事故といえるでしょう。

しかし「支付宝では銀行口座やクレジットカードが全て携帯電話の番号に

直結」しており「簡単に支払える代わりにそれなりのリスクも背負う」点は

今後も注意する必要があります。中国ではSIMロックフリーの端末が

主流であるため、通話料の自動引き落としを設定せず、プリペイドカードや

オンライン決済、窓口での支払いで通話料をチャージすることで本名を

いつまでも登録せず携帯電話を使い続けることが可能ですが、電話番号は

もはや単なる個人情報ではなく、自分の財産に直結する機密であるという

リテラシーを持っていないと思わぬところで被害に合うことになります。

また、今回はたまたま中古品で購入した経緯がありましたが、これが仮に

「盗難」であっても同様の被害が発生し得るので、支付宝の正式名である

「支付宝銭包(支付宝サイフ)」の名の通り、これからの時代、

携帯電話はサイフと同様或いはそれ以上の管理が必要です。

私も本人確認とワンタイムパスワードが必要なクレジットカードは

支付宝と連動させていますが、銀行口座と直接連動させることには

今でも大きな抵抗感があり設定していません。

しかしオンライン決済の利便性は何事にも替え難く、最近では

そもそも「オンライン決済しか受け付けないサービス」も急増しています。

過去の特集で取り上げたあるサービスはまさにその一例、

「大量資金を投入し、現金還元でユーザーを増やす」という今回のお年玉作戦と

同じ手法で少し前に大流行したアプリがありました。

皆様覚えておいででしょうか。

 

  • タクシーアプリ「焼銭」合戦の終焉と新たな問題

 

支付宝や微信支付など、オンライン決済しか受け付けないサービスの

筆頭は何と言ってもタクシーのアプリです。アリババ傘下、支付宝と

連動した“快的打車”と中国版ツイッター“Wechat=微信”が絶好調の

腾讯(テンセント)傘下、微信支付と連動した“滴滴打車”の2大プレーヤーが

「焼銭戦」の文字通り資金を焼き尽くすかの勢いで数億元規模の

インセンティブをユーザーとタクシー運転手に提供するまさに

『殺るか殺られるか』の熾烈な争いを繰り広げていた経緯は昨年4月の

本ニュースレター特集でご紹介したとおりです。そもそもこの2社の争いは

アプリの普及ではなく支付宝と微信支付の市場シェア争いであり、

お互い身を削っての競争は悪循環に陥ることが目に見えており、

長くは続かないと分析されていましたが、先月、案の定その分析の

正しさが事実により証明される形となりました。

 

滴滴、快的、互いに相容れることのなかったこのタクシーアプリの

二社は突然「電撃結婚」を発表。合併後の新会社の価値は100億米ドルを

超えると予測され、かつて百度が9.1億米ドルで91無線を買収した例を超え、

国内のインターネット業界史上最大の合併となった。

http://www.huaxia.com/zk/sszk/wz/2015/02/4286308.html

(2015年2月25日 華夏経緯網)

 

中国語原文で“闪婚=電撃結婚”と評されているように発表は突然であった

ものの、誰もが薄々予測をしていた結果であっただけに市場の混乱はナシ。

また理由についても隠すことなく元・快的打車のCEO呂伝偉氏が

『継続的に資金を焼き尽くすような大規模で悪循環な競争を続けることは

できない』とコメントしています。合併後は元2社のCEOが同時に

“連合CEO”として指揮をとるそうで、個人的にはこの点のみ迷走の危険を

感じますが、純粋に経営側の観点から見れば組織が一定期間迷走しようと

合弁後の社内で多少の不和が生じようと強力な競合とは早い段階で手を

組んでしまった方がよいことは確かです。トップ二社の合併により事実上

ほぼ市場が独占されることから「独占禁止法に抵触するのでは?」という

声も出ていますが、上述の記事によると元・快的副総裁の陶然則氏は

『交通手段という市場は非常に大きく、タクシーのほか運転代理、バス、

地下鉄などが存在する。滴滴と快的がその中の非常に小さい比率を占めて

いるに過ぎず、業界のプレーヤーも多い。従って独占は存在しない』

とコメント。また、中国インターネット協会信用評価センター法律

顧問の趙氏も『“反独占法”の規定によると、国家が禁止しているのは主に

企業が市場における支配的地位を濫用する“独占行為”であり“独占状態”

ではない』と同様の見解を発表。「状態ではなく行為である」とは言いえて妙、

『モノは言い様だな』と内心思いましたが、合弁の認可が下りたということは

即ち政府も司法も業界活性化のため黙認していることの表れであり、

よほどの濫用行為で不満が出ない限り独占禁止法の観点から批判される

ことはないのだろうと思います。

問題は結果です。

現在の中国タクシーアプリ業界においてはまさにマキャベリの言葉通り

結果さえよければ(ある程度の限度はありますが)過程は正当化されます。

オンライン決済のユーザーも順調に増え、脅威であった強敵とも手を

組み危険を回避した二社のサービスは果たして引き続きユーザーに受け入れ

られるのでしょうか。

 

『じゃあもう手当てが出ないってこと?』昨日自分の携帯電話に表示された

ニュースを見たOL、李氏はとっさにこう反応した。従来、彼女は滴滴で

車が見つからないときは快的を使用しており、それでもタクシーがいない

ときはシステムが自動的にインセンティブとしてチップを追加しユーザーの

ためにタクシーを予約していた。『今後、こういったインセンティブは

確実に少なくなるでしょうね』と彼女はコメントした。同様にがっかりして

いるのはタクシーの運転手である。(中略)昨年から二社のアプリを使用

し始め、毎日どちらの会社のインセンティブが多かったかを計算するのが

運転手邹氏の日課であった。『確かに、最近二社とも手当ては減っていた』。

二社の合併後どのアプリを使用するかは決めていないが、手当ての減少に

伴いアプリを使用する回数も減るだろうと彼自身予測している。

(2015年2月25日 上述の同記事より)

 

急激なユーザー数の増加は「現金の手当てが出る」という一点に支えられて

いたことをここでもう一度認識しなければなりません。現在、上海では

ラッシュのピーク時を除けば概ね流しのタクシーも捕まるため、金銭的

メリットがない情況でわざわざ予約をするのは乗るほうも乗せる方も

お互いに手間です。数十億元のタクシーアプリの大盤振る舞いに続き、

今年は旧正月のお年玉イベントにより更に40億元の電子マネーが市場に

投入されました。その人口から想像できる通り、中国市場がEコマースに

とって巨大なポテンシャルを秘めたドル箱であることは間違いありませんが、

それを考慮しても初期投資としては異例の金額です。

これだけの出費に見合う形でユーザーをオンライン決済に依存させることが

できるのか、またそこから十分なリターンを得られるのか、そしてシステムの

セキュリティ問題は今後順調に解消されるのか。

大手各社の次の一手に注目が集まっています。

 

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