バックナンバー 社員の日記 2015年4月号

◇◇◇()新入社員の日記 2015年4月号(前編)◇◇◇ 

 

風邪を限界までこじらせ気管支炎を併発、1ヶ月以上かけてようやく

完治した矢先、先週またのどの細菌感染を起こし心身ともに弱り切った

Sでございます。どのくらい弱ってるかというと、「輝」という字を

「褌(ふんどし)」と読み間違えて「最近また妙なものが流行ってるな」と

しばらく悩んでいたほど深刻な事態に発展しています。

私は子供の頃より季節の変わり目に指の皮が剥けるので、アザラシが

冬毛から夏毛に生え変わるようなものだと思っていたのですが、

アザラシの衣替えはせいぜい1ヶ月間のイベントです。今回は手も風邪の

症状も2ヶ月近く続いており、病院に数回通ったところ免疫力が大幅に

低下していたことが発覚しました。おかげで日頃の行動はボロボロで、

ここ最近の行動の中からワースト3を挙げますと

3、ペットボトルの蓋をしたまま中身を必死に飲もうとしており、

  見ず知らずの中国人から

  『あんた、大丈夫か?』「は?」

  『蓋!』「蓋が何だって?」『蓋だよ!』と心配される。

2、個別包装のキャンディを袋ごと口に入れ「また不良品か・・・」と

 しばらく気づかない。(注:ささやかな異物混入や何をどうやっても

 はがれない包み紙にはよく遭遇します)

3、おやつの亀ゼリーをストロー2本を箸のように使い食べており、

 その後「箸じゃない」と気づいた瞬間にゼリーが突然つかめなくなる。

など、いつまでも起動中のPCのようなひどい有様でした。

ちなみに亀ゼリーとは龟苓膏(グイリンガオ)のことで、香港や広東地方で

ポピュラーな薬草臭いゼリーです。中国の方の中でも好き嫌いがはっきり

分かれますが、私はこれが大好物で、高級店の本格ゼリーより3個1パックの

スーパーの廉価品のほうが苦味がマイルドでおいしいです。

ゼリーは固さがあり、箸でもなんとか食べられるのですが、その日はぼんやり

しすぎてストローで食べておりました。人生三十数年目にして無意識だと

結構器用なことが判明しましたが、普段は意識があるので結局何の役にも

立ちません。今年の上海は春が短く冬から直接梅雨に突入しそうな気配、

細菌感染や風邪が大流行しておりますので皆様お体だけはくれぐれも

ご自愛ください。気休め程度にビタミン剤などを胃に流し込みつつ、

今月も最新のニュースをお届けします!

 

■某月某日 美容院と中国の日常における与信管理の重要性 

 

海外に何年も滞在するにあたり、ついうっかり見落としがちな大きな

問題があります。そうです。美容院です。美容院は間違いなく生活の必須

インフラです。洋服や化粧などは家に帰って着替えたりやりなおしたりと

随時微調整がききますが、髪形だけは一度失敗したが最後、その後数ヶ月は

修正のしようがなく、しかも自分で直す術もありません。その上髪型が

第一印象に占める割合はとても大きく、その場のノリで冒険をすると

その後の人間関係や社会生活が文字通り冒険そのものになるような年齢を

迎えてしまったので、美容院と美容師の選択には細心の注意を要します。

幸い、上海の美容院はあまりにも安価なローカル店を除き比較的安定した

技量のお店がそろっており、カラーもパーマも一通り日本とほぼ同じ施術が

可能です。日系の美容院もずいぶんありますが、言葉が通じないリスクを

逆手に取って「カット500元(=10,000円)」などという奇妙な価格設定を

している店が多数のため、選択肢には入れません。言葉のリスクなど

その後3ヶ月から半年気に入らない髪形で過ごすリスクに比べれば取るに

足らない障害、そもそも髪型に関しては母国語で日本人同士会話をしていても

理想の仕上がりになるかどうかは“美容師の技量・自分のイメージの表現力・

髪質・運”の四要素によるルーレットの結果次第、ダメな時は結局ダメなので、

この際言葉はあまり大きな問題ではありません。

「医師と美容師は絶対に地元中国の人しか指名しない」と固く心に

決めている私がここ数年通っているのは自宅の近所のお店です。

美容師を指名しカット・カラー・パーマなど希望の施術をカウンセリングで

決めていくところは日本の美容院と同じですが、その営業形態は

大きく異なります。まず一番違うのがお店のサービス内容です。

店舗規模にもよりますが、こちらの美容院にはネイリストやマッサージ師が

常駐していることが多く、髪を切っている間に同時進行でマニュキュアと

ペディキュアが完成します。これは本当に便利です。唯一の難点は2人の

ネイリストに手と足を、美容師に首から上を、と合計3点が固定されるので、

少しでも動くと3人のうち誰かからすかさず

「前髪を切るから正面を向いて!」『はいわかりました』

「足が乾くまで動かしちゃダメ!」『はいすいません』

「手が乾いてないからお茶はまだ飲まないで!」『ごめんなさい』

と厳しいダメ出しをされることです。ふと鏡を見ると、人間というよりは

むしろ“トリマーに毛を刈られている犬”という形容がふさわしい、

なすがままにされている自分と目が合います。中国系のお店はシャンプーに

「干洗」「湿洗」の二種類があります。干洗は通常の会話では

クリーニング店の“ドライクリーニング”を指す中国語なので初めて

この言葉を聞いたときは有機溶剤でごしごし洗われるのかと内心震え上がり

ましたが、実際の干洗は椅子に座ったまま座席でシャンプーを泡立て、

流すときだけシャンプーボウルを併設した座席に移動するスタイル、

湿洗は日本と同様に最初から寝そべって洗ってもらうスタイルです。

中国ではなぜか干洗の方がポピュラーですが、顔や首筋に泡を落とさない

職人技の使い手がひしめいており、「これだけ器用な人が多いと“シャンプー

ハット”は売れないだろうな」などと場違いなことを毎回考えます。

その後は肩もみと耳かきが付き、日本よりお得感が高いサービスです。

他にも子連れの人が来たら(手が空いているスタッフがいれば)子供と

遊んでくれる、タブレットPCを貸してくれる、ひもじそうにしていると

おやつを分けてくれる、買い物帰りに寄ると冷蔵庫を使わせてくれるなど

様々なサービスがあります。後者2つはサービスというよりはたまたま

私がそういう情況に陥っていただけなのですが、相当融通が効くことは

確かなので何でもとりあえず口に出してみるのが吉です。

これだけのサービスを提供しながら価格は比較的リーズナブルでまさに

至れり尽くせりですが、そんな中国の美容院にも一つだけ難点があります。

一体何なのでしょうか。詳細は後半、ニュースレターの最後へ!

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◇◇◇連載 ()新入社員の日記 2015年4月号(後編)◇◇◇

 

商習慣の違う中国における業務でぶつかる壁の中でも “与信管理”は

キャッシュフローや収益に直結する非常に重要かつ深刻な悩みです。

形式的に外部機構から信用調査資料を購入し、稟議書を書き決裁を仰ぐ、

という従来型のリスクヘッジには限界があります。国を問わず裏帳簿を有する

企業など世界中にありふれており、資料の信憑性がまず疑われます。

その上どんなに資料を分析したところで相手に夜逃げでもされたらおしまいです。

与信枠の設定に“確実・絶対”などという概念はなく、そのため中国では

前払いや手付金の支払いが習慣として企業から個人の取引に至るまで浸透して

います。上層部の決裁を待って石橋を叩いて壊すより、稟議を上げる時間を

相手との支払い条件交渉に費やしたほうがより柔軟且つ迅速に商談も

まとまるでしょう。と、ここまではあくまで業務の上での話です。

仕事の時間に与信管理を実施するのはまぁ仕方がない。

しかし、日常生活のあらゆる場面においても与信管理を求められるのが

上海の現状です。

「もう一人拾うの?じゃあここで待ってるから、手付けで30元払って!」

というタクシーの運転手がそのまま走り去らないとは限りません。

自分が損をしない金額、即ち運転手の方が損をする金額になるまで交渉

しなければなりません。更に「じゃあ先に払っといて!明日入荷するから

取りにおいで」という街の雑貨店が翌日サラ地になっていないとも限りません。

誰がそんなもの払うでしょう。一回で完了する取引はこのようにその場の

判断が求められますが、概ね少額で後腐れのない関係なので悩むことは

ありません。問題は何度も利用するサービス施設の“プリペイドカード”です。

何が問題なのでしょうか。

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クリーニング店からネイルサロン、マッサージ店や美容院、パン屋や

レストランに至るまで、当地ではプリペイドカード形式の決済がとても

盛んです。後半の冒頭で散々与信管理について触れたところから皆様ご想像

いただけると思いますが、これらのプリペイドカードは“その店が長期間

潰れない”という前提で購入しないと後々大損することになります。

「そんなカードを誰が買うのか」という疑問が当然わいてきますが、

実はここにトリックがあり、プリペイドカードは購入金額に基づき

その後の消費に割引きが適用されます。例を挙げてみましょう。

私は通っている美容院の5,000元のカードを購入しています。そのため

シャンプー、カット、美容師の指名料はじめマッサージやネイルなど店の

全メニューに50%の割引きが適用され、実質10,000元分使える計算になります。

1,000元のカードは10%オフ、3,000元は20%オフなど割引率はカードの値段に

より異なります。従ってこの美容院に対する与信管理は

「店が長期間潰れないか」という予測の難しい要素だけでなく、

もっと具体的に「有効期限までの数年間店が持ちこたえ、かつその年数内に

実質10,000元分使いきれるか」を考えればよく、難易度は若干下がります。

その他美容師の転職リスクやメニューの値上げリスクなども考慮し、

自分のサイフ事情や利用頻度などと合わせて検討するので、担当の美容師が

待遇に満足しているか、店の経営はどうか、オーナーとの関係や社員の

入れ替わりはどうかなどをカット中の会話からさぐりつつ消費計画と次回の

購入金額を決定します。美容院で黙って髪を切られている人が少ないのには

このような背景があり、もちろん口数の多さには個人差がありますが、

ほとんどの人が必ず経営状況に関する質問は口にしています。

何度もご紹介しているように中国ではお金の話がタブーではないので、

聞かれる方も仲良くなればお店の賃料まで教えてくれます。

しかしテナントの回転が早い上海、カードの残額を残したままお店が潰れる

ケースは相変わらず後を絶ちません。私は9年前に当時利用していた

クリーニング店が潰れ、25元(500円)残っていたカードの残額を

取り戻すためチェーン店管轄本社に電話したところ

「申し訳ありません。お返ししすので本社までお越し下さい」と言われた

にも関わらず、往復の交通費の方が高いのであきらめた経緯があります。

今回、この日記を書くにあたって中国に十数年間滞在している同僚に話した

ところ「『じゃあ行くからタクシー代を出せ』と言えばよかったのに」と

言われ、その手があったかと感動する自分と、500円にそこまで神経使うのは

嫌だと拒絶する自分に挟まれ、精神的に疲れました。冒頭のとおり、

与信枠の設定に“確実・絶対”などという概念はありませんので、自分の勘と

得た情報を信じて日々を乗り切ると同時に、

「このくらいの金額までは損が出てもあきらめる」と足切りラインの

目安を決めておくのが得策かと思います。ふと、ここで

「どうせ似たようなシュミレーションが必要なら株でも買っておけばよかった」

とようやく思い立ったのですが、ここ数年で最高だった上海の株価は数週間前に

一段落してしまっており、何でも後から気が付くような人間に市場の

トレンドが読めるとは思えませんのでおとなしくやめておきます。

 

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