バックナンバー  “上海 勝手にレストラン・アワード!” 2015年6・7月合併2周年特集号!

 “上海 勝手にレストラン・アワード!” 2015年6・7月合併2周年特集号

 

このコーナーは、独断と偏見に基づき、お店の許可も一切取らず

SGS社員が文字通り「勝手に」ステキなお店をご紹介する場です。

今回は2周年記念として通常の倍の文章量でお送りしております。

12回目、過去の連載の中で今回のチョイスに最も頭を悩ませたSがお届けします。

レストラン・アワードには何故中華があまり出てこないのか。

それは予算と接待の相手を聞かないと店を絞り込めないほど選択肢が

多すぎるからです。『中国なんだから中華が一番安くておいしいでしょ?』

という思い込みは我々外国人が犯しやすい過ちの一つであり、『中国だからこそ

本物の高級中華が溢れており、高い店は海外よりはるかに高い』という点から、

まずは予算の問題が挙げられます。

特に上海は物価が全国平均を上回る高騰地区。高級店では1人数万円、

1卓十数万円の予算が必要です。広東料理店でほぐれていない(=春雨などの

まがい物ではない) “繋がったフカヒレ”などが出て来た場合、お会計は1人2万円は

下らないと踏んでよいでしょう。個室なら尚更です。但し、一人5万円、6万円の

バブルな中華になると今度は“高そうな味”が“美味”の概念とちょっとズレてくる

リスクがあります。

二つ目の問題は場所です。安くておいしい庶民的なお店もそれこそ星の数ほど

ありますが、「接待に使うには内装がショボい」「味はいいけど接客が・・・」

という難点があります。

そして最後、三つ目に「実は上海にはあまり名物がない」という最大の難関が

あります。誤解なきように注記すると、これは私の感想ではなく、地元上海の

方々のコメントです。上海は近代に発展した移民の街ですので“上海名物”

というよりは“近郊の土地の名物”が多く、上海蟹や小龍包などがその筆頭です。

本物の伝統上海料理は一般家庭でしか食べられず、必然的に名物メニューも

“家庭料理”がメインになるので、高級な接待となるとどうしても値段もお店の

格もそれなりで、海鮮がメインの広東料理などに軍配があがります。

私は幸い、一般家庭の上海料理に接する機会が多々あるのですが、

感想はとにかく『甘い』の一言です。濃口醤油と氷砂糖をカラメル状に

なるまで煮詰めた“紅焼(ホンシャオ)”味が名物で、豚の三枚肉を煮込んだ

“紅焼肉”と白いご飯が上海人のソウル・フードです。

調理過程と材料は沖縄の豚肉の煮込み“らふてー”とほぼ同じですが、

味はもっともっと甘く、そして醤油で色が真っ黒です。日本人の感覚からすると

やや甘すぎで、中国の他地域の方も「実は上海料理は苦手」という場合が

ありますが、慣れとは恐ろしいもので、今ではこれらが私の大好物です。

伝統の味を再現するコツは土俵に塩撒く力士の如く、

ケチらず景気よく砂糖を鍋にぶちまけることです。

さて、上述の理由から地元の方は「紅焼肉だったらお父さんが作ったほうが

おいしい」「わざわざ外に食べにいかなくても」と家庭の味に絶対の自信を

持っていますが、そんな皆さんもたまには家族や友人との集まりでレストランを

利用することがあります。

そこで今回は2周年記念として、上海人推薦の上海料理を3軒ご紹介します!

 

江酒家

住所:南京南路1111号 

電話:02162531265

 

伊勢丹の真向かいに自社ビルという絶好のロケーション。

最近では珍しい、店内の顧客も店員もほとんど上海語(普通語=北京語も当然

通じます)の地元密着型老舗レストランです。

お勧めは何と言っても「元宝蝦(ユエンバオシャ)」。やや大型サイズの蝦を

高温で短時間、繰り返し揚げることで殻と身がきれいに分離する甘口の

唐揚げは、繊細な温度管理が必須、一般家庭では再現が難しい職人技です。

私はこの料理が運ばれてきた途端、食べ終わるまで15分ほど無言になります。

運がいいと結婚式の宴会なども見られます。

 

园酒家

住所:襄阳北路108号嘉中心会所1-2(その他市内に多数店舗あり) 

電話:02151083377

こちらは市内に数店舗を有するチェーン店で、外国人慣れしたお店です。

お勧めはおなじみ“紅焼肉”、

『(色が)黒い!(味が)甘い!(量が)多い!』

の3点を見事に満たした山盛りの三枚肉は試す価値アリです。

時折、さじ加減を間違えるのか日によって味が甘すぎたり、オーダーが漏れたり

する場合もありますが、まぁ、誤差の範囲内です。ご飯を追加すれば問題あり

ません。紅焼肉の煮卵は別料金で追加するシステムですが、必ず人数分頼んで

ください。奪い合いになります。

 

新吉士

住所:黄金城道91 (その他市内に数店舗あり) 

電話:02161295443

上海名物“葱油拌面(ツォンヨウバンミェン)”は葱油の和え麺ですが、

シンプルがゆえに加減が難しく、店によって当たり外れがあります。

欧米人客も多く、華やかな他の料理に目を奪われますが、ここの隠れた名品は

この麺です。上海料理=甘口の概念を覆す適度な塩辛さももちろんお勧めの

ポイントですが、注目すべきはダシに使われる干し蝦です。

“开洋(上海語:ケーヤン)”と呼ばれる干し蝦は上海料理のダシに欠かせませんが、

蝦が痩せている粗悪品や水で戻しきれておらず塩辛いだけのものも多い中、

このお店ではふっくら肉厚なケーヤンを完璧にもどしてあり、

殻まで食べられます。和え麺の特徴上、もたもたしていると麺がくっついて

しまうので、料理が運ばれたら速やかにかき混ぜ、一心不乱に平らげてください。

 

以上、ご紹介のお店は全て(上海の物価にしては)合理的なお値段、

新吉士、圆园、新镇江の順に外国人慣れしたお店です。どこもメニューには

写真があり、新镇江に至ってはメニューがiPadになっていますので、

多少言葉が通じなくても指差しでオーダーできます。

旅行の際に立ち寄るのもお勧めです。

ちなみに今回、葱油の和え麺をご紹介するにあたり上海の知人たちから

『何故そんなつまんない料理を紹介するんだ』と呆れられました。

私たち日本人が“スーパーのお寿司に感動する外国人”に遭遇した時のような、

ちょっと残念な心持ちになるそうですが、地元の人が食べ飽きた料理とは即ち、

飽きるまで食べるほどおいしいという証明でもあります。

シンプルな伝統の味、糖分過多にだけご注意の上ご堪能ください。

 

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