バックナンバー 中国最新情報 “食卓の見えざる刺客、“地沟油”問題!” 2015年6・7月 2周年記念合併号!
中国最新情報 食卓の見えざる刺客、“地沟油”問題!
2015年6・7月 2周年記念合併号
お店や料理の値段に関わらず、どんな場所でも食の安全が懸念されるのが現在の
中国の情況ですが、その問題を最も体現しているのが地沟油です。
肉や野菜などはまだ避けようもありますが、油となるとどの料理にもほぼ必須の
材料であり、また中華は揚げ物も多いため、市民の懸念は高まる一方です。
そこで2周年記念の今回は、地沟油の現状と最新のニュースをご紹介します。
- そもそも地沟油とは何なのか?
中国語の地沟=ディーゴウとは日本で言うドブのことです。地沟油とは
文字通り“ドブ油”のことで、排水路やドブに捨てられた油を回収し、
色々と違法に手を加え、新しい“食用油”と偽って市場に出回っている
廃油のことを指します。
上海の街中で、残飯を満載した巨大なポリタンクを荷台に積んだ三輪車
などを見かけたことのある方もいらっしゃると思います。
中身はレストランやホテルの残飯、何度も使い古した揚げ物の油、そして
ドブ水の表面に浮いている油をすくったものなどで、まさにこれらが
地沟油の原材料です。材料費はタダ同然。
モラルの問題をひとまず置いておくとすれば、最初にこれを食用油に再利用
しようと思いついた人は天才だと思います。
但し、「安全性は・・・?」などという質問はもう問う方が野暮というもので、
安全であるはずがありません。
すくい取ってきた大量の濁った沈殿物や、赤みがかったペースト状のものに、
丸一晩かけろ過・過熱・沈殿・分離を施すと、悪臭を放つゴミが清く澄んだ
“食用油”に変化し、最終的に人々の食卓に舞い戻ってくる。(中略)地沟油は
3種に分けられる。一つ目は狭義における地沟油で、下水道に漂っている油や
ホテル、レストランの残飯を簡単に加工し産出する油である。二つ目は質の悪い
豚肉、豚の内臓、豚の皮を加工後に産出される油である。三つ目は一定の回数
以上使用した揚げ物の油を再利用、或いは部分的に新しい油を加えて
再利用するものである。
(百度知道)
知れば知るほど「地沟油にも種類がある」などという豆知識はこの際もう
どうでもよくなってくる恐ろしさです。どうせどれも安全ではないのです。
このWEBの解説によると人体への副作用は消化不良、細菌感染のみならず、
胃がんや腸がんのリスクも右肩上がりです。これら最低品質の地沟油の
販売先は(グレードの低い)ホテルやレストラン、家畜の養殖基地、工場や
学校の食堂、そしておなじみの屋台など、とにかくコスト最重視の場所
ばかりです。あまりにも安いレストランや得体の知れない屋台などを
避けることは容易であり、食堂の業者も取り替えることができますが、
家畜の飼料に混ぜられているとなるともう逃げ場がありません。
日本始め海外の消費者も安心してはいられません。
加工品に使われたらおしまいです。
中国の消費者が恐れているのはまさにこの点で、
「どんなに安全そうな物でも、その源まで遡ることはできない」
のが一番の懸念点になっています。
食費を出費と捉えるか、保険費ととらえるかは人により異なりますが、
値段につられて飛びつくな!という意見は上海現地の人とも共通した
一般認識です。私はかつて師と仰いだ方の
『あんたたち外国人はね、私たち中国人が絶対に食べないような変な屋台の
羊肉や鍋を珍しがって食べてお腹を壊す!そして中国の食べ物は不潔だとか
勝手なことを言う!ケチるんじゃないわよ!食事にはお金をかけなさい!』
という教えを10年厳守しており、ザリガニも屋台の食品も一度も食べた
ことはありません。
(注:食用ザリガニの料理は上海の夏の風物詩で、有名店は行列ができます)
市民のみなさんもより安全な食品へのリサーチに余念がなく、かさむ食費に
頭を悩ませながらも健康をお金で買う生活を続けています。
そんな中、今月また改めて地沟油の恐怖を煽るニュースが報道されました。
一体、何が起こったのでしょうか。
- 上海過去最大規模の摘発!しかし報道が・・・
7月初旬、市民の摘発による大規模な地沟油基地の摘発があり、
ニュースで早速報道がありました。
私が見たニュース動画を下記リンクからご覧いただけます。
http://imedia.eastday.com/node2/2013imedia/news/shxw/u8i654288.html
(2015年7月4日 東方網)
※中国語音声のみ、上海語、その他方言などには中国語字幕が付きます
※音が出ますのでご注意ください。
事件のあらましを上記動画を元に箇条書きにまとめます。
1、事の発端
上海郊外“宝山地区 城中村”付近の住民某氏(冒頭、上海語でインタビューに
応じている老人)が近所の数百㎡の空き地に数百個のドラム缶が置いてある
と匿名でTV局に通報。「すでに3年近く見張っていたが、煙が出ているなどは
しょっちゅうで、出入りしている人間も怪しい。油をこっそり運搬している
のを頻繁に見かける」とコメント。
2、記者の取材
記者が現場に取材に行くと、確かに油桶を積んだ小型トラックが出入りしており、
何かを燃やした痕や薪を置いたテントなどが散在している。現場では作業員が
「レストランから回収してきた」悪臭のする油を屋外でドラム缶で煮詰めている。
3、油の行方
記者が油の運送先を突き止め、油は宝山から同じく郊外の「嘉定虹橋潤滑油工場」
(筆者注:上海市内長寧区の虹橋地区とは無関係)に運ばれていることが発覚。
工場内には腐敗臭が立ち込めているが、潤滑油を作っている様子はない。
工場内の人員に話を聞くと「俺は関係ない。場所を貸しているだけだ」
「同郷の人間に貸しているが、3-4人(社)が共同で借りている」とコメント。
4、ようやく政府が登場
番組が放送された後、ようやく“嘉定公安市場管理局”等が摘発に動き、宝山と
嘉定の二拠点にガサ入れを決行。宝山ではドラム缶96個、1.9万斤≒9500kg
相当の大量の地沟油を押収。
5、オーナーの身柄を拘束
嘉定虹橋潤滑油工場法人代表の楊氏が捕まる。「安徽省出身の某氏に貸しただけ」
「自分は地沟油には関わっていない」と主張するが、公安局に連行され尋問の後、
「地沟油は山東省の某バイオ企業でディーゼル油の原料にされている」と自白。
6、事件のフォローアップ
宝山の基地に出入りしていた運送人員たちはすでに夜逃げ。現場に立ち入った
警官は「運送人員は引き続き探し、油の出所を突き止めて調査する」とコメント。
一拠点だけで9,500kgという大規模な摘発ですが、こんなものは氷山の一角、
すでに市場に出てしまった油の行方は分からず、また本当に非食用用途
として使用されているのか、つかまった楊氏がスケープゴートである可能性は
ないのか、などなど謎は色々残ります。その後、私はこの事件の後続情報を
知りたかったのであちこちネットを検索したのですが、その後TVからも
WEBからもこのニュースがふっつりと途絶えてしまい、閲覧できる記事は
一つもありませんでした。
何故、冒頭の老人はわざわざ“匿名”で基地を摘発したのか。
何故、市民の摘発があるまで公安が動かなかったのか。
そして何故、これだけの規模にも関わらず事件の報道がないのか。
皆様理由はお察しのことと思いますが、非常にデリケートな内容になりますので
ここから先は「ニュースレター・ノーカット版」をご覧の方にのみ
お送りすることとし、記事の結びとさせていただきます。
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