バックナンバー 社員の日記 2015年5月号

◇◇◇()新入社員の日記 2015年5月号(前編)◇◇◇ 

 

正式に入梅した上海でうんざりするSでございます。

今までに何度もお伝えしている通り、上海は非常に湿度が高いので、

座っているだけでもじめじめして気分が滅入りますが、さらにこの時期から

私の大敵となる“奴ら”も出現し始めます。

プライバシーや営業時間の概念を一切無視し、ゲリラ戦の繰り返しで相手の

戦意を極限まで削いだところで一気に攻撃に転じる高度な戦術を駆使する

“奴ら”とは、他でもない蚊のことです。上海の蚊は東京の蚊と比べ動きが

やたらと機敏で、「一晩で8箇所刺す」「指の関節、足の裏、爪の間も指す」

「果てはまぶたまで刺す」と反則行為も辞さない攻撃型、虫除けの類も

多種販売されてはいるもののたいした効き目はなく、結局見つけ次第

容赦なく叩きつぶすのが最良の対策です。明け方、力尽きて壁に止まって

いるところをスリッパで叩き潰すときなどは

「待て!無抵抗の相手を攻撃するのか」

『芽はすべて摘んでおくべきだ。刺されてからでは遅い!』

と内心で政敵の一族を次々に葬っていく悪宰相の役を演じると心なしか

ヒット率が上がる気がします。当地では網に高圧電流を流すテニスの

ラケット状の虫取り器なども販売されているのですが痒みと怒りで

我を忘れた状態であんなものを室内で振り回すのは危ないので、

今年も購入の予定はありません。長袖パジャマで装備しつつ、

今月も最新のニュースをお届けします!

 

■6月某日 寧波出張 鉄道の旅

 

皆様端午節の休暇はいかがお過ごしでしたでしょうか。

粽(ちまき)は召し上がりましたか?

私はまたしても風邪で高熱を出し、3日間臥せっておりました。

今年は清明節、児童節、端午節と3連休をすべて病床で過ごし、

「人の連休をコンプリートしてさぞかし楽いだろうな!」

と菌に悪態をついていた矢先、この先国慶節(10月)まで連休がない

ことに気づき愕然としました。あまりのくやしさに涙も出ない私とは反対に

上海は梅雨の集中豪雨に見舞われていますが、今回はキノコの培地状に

湿った上海を脱し寧波に日帰り出張に行ってまいりました。

移動は毎度おなじみ高速鉄道の利用です。

上海―寧波間は杭州を経由し丁度2時間ほどの距離です。中国にいると

あまりの広さにだんだん地理的感覚が麻痺してくるので、移動2時間、

飛行機ではなく鉄道、しかもお隣の浙江省と聞くと

「ちょっとそのへんの街へ」という錯覚におちいりますが、実際は

東京-大阪間の新幹線(のぞみ)移動とほぼ同じ時間を過ごしていることを

考えると、改めて中国の広さを実感します。上海西部の虹橋駅を離れると

間もなく車窓から見える景色も一転し、街と街との間は見渡す限り鷺が

舞い降りる水田やアヒルの群れが行きかう水路などが目立つのどかな

風景が広がります。山の斜面に伝統的な形式の墓地が並んでいたり、

見るからに歴史がありそうな石造りの小さな塔が立っていたりと名もなき歴史

建造物も多々見えますが、中国にいるとあまりの歴史の長さに時間感覚も

同様に麻痺してくるので、しばらく眺めているうちに農具を置く小屋など

まで数百年を経た遺跡に見えてきます。高速で通り過ぎるトタン造りの

アヒル小屋を横目に「あれはもしや、唐の時代、はるばる長安に献上されて

いた朝廷御用達アヒルの末裔・・・!」などと適当なことを考えている

うちに今度は車内販売が始まります。

『お弁当、アイスクリーム、コーヒーはいかがですか』

と声がかかりますが、残念ながら鉄道の車内販売のお弁当をおいしいと

思ったことは過去一度もないので、今回はサンドイッチを持参。

もそもそと食事をしつつメールなどを確認していると、続いて係員が

チケットの確認に来ます。中国では過去、キセル乗車やダフ屋(旧正月等の

混雑シーズンにチケットを買占め高値で転売する)が横行しており、

その取締りのため近年より『実名登録制度』が実施され、切符に身分証明書

番号と本名が表示されるようになりました。チケット確認の係員は

日本のように鉄道会社の社員ではなく公安の警官であり、キセルや

スリなどの問題が発覚すると即座に犯人を連行します。そのため

『係員がチケットの確認にうかがいます。違反者は法に基づき処罰

 されますので、皆様ご協力ください』

というアナウンスが流れると妙に緊張し、姿勢を正して椅子に

座りなおしたりするのですが、そのような時に限って自分の乗っている

車両には来ず、半分居眠りしているような時にばかり来るのは何故なので

しょうか。起きた瞬間警官が目に飛び込んでくるのは心臓に悪いので

やめていただきたいです。

さて、このように近距離の鉄道の旅はぼんやりしている時間がないほど

乗車中もせわしなく色々なイベントが発生しますが、列車の旅を100%

満喫するにはまだまだ不十分です。旅の醍醐味は他にもまだあります。

一体何なのでしょうか。

詳細は後半、ニュースレターの最後へ!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

◇◇◇()新入社員の日記 2015年5月号(後編)◇◇◇ 

 

寧波は古来海運の要所として栄えた街であり、かの鑑真が日本へ出航する前に

滞在していた古刹などの観光地も多く、何よりおいしい海鮮が有名です。

甘口の上海料理とはまた趣向が違う塩辛い味付けの新鮮な海の幸は

日本人の味覚にもぴったりです。私が過去、最後に寧波を訪れたのは

7年前になり、昼食でおいしい海鮮と共に浴びるほどビールと紹興酒を飲んだ

過去の勤務先の上司が観光地でトイレを探しまわり、その上陸路をバスで移動

したため私の寧波に関する思い出は「海鮮・渋滞・微妙な上司」という

なんとも複雑なものだったのですが、当時すでに市の中心部には映画館を

備えたデパートや欧米のファストファッションが出店しており、

浙江省=富裕層密集地帯のイメージそのものの豊かな街でした。

2015年現在の寧波は地下鉄も開通し、発展の度合いも段違い、巨大複合

商業施設を車で通りすぎた際は思わず窓から身を乗り出してしまいました。

ちなみにどのくらい巨大かは『街中に突然、新宿伊勢丹が4-5棟現れ、

中が全部デパートとオフィスと飲食店』と書くとイメージいただけるかと

思います。さて、今回は半日の旅程でしたため予定終了後はそのまま

寧波駅へと戻りましたが、列車の旅は乗車する前から見所満載です。

一体何を見るのでしょうか。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

鉄道利用の出張で一番頭を悩ませるのは「時間調整」です。中国の鉄道は

ありがたいことにほぼ時間通りにダイヤが運行され、発車時刻になると

音もなく列車が滑り出します。ベルやアナウンスの過保護な日本式サービスに

慣れ切っていると乗り過ごしてしまいますが、発車直前までホームが決まらない

欧州の鉄道のような不便さはなく、ホームはチケット購入の段階で記載されて

います。問題はホームのゲートが開くのは発車15分前からのみ、3分前には

クローズされる(大型駅の場合、地方にもよる)ので、必ず時間前に駅に

到着している必要があり、ここで空き時間が発生します。飛行機と違い、

列車は移動中にメールチェックなど十分な時間が取れるので、駅では私は

いつも構内の本屋をくまなく回ります。駅の本屋と空港の本屋は、何故か

示し合わせたようにどこもほぼ同じものを売っているからです。

雑誌の最新号や子供向けの絵本の他、必ず置いてあるのは

「金もうけ関係」「心理学関係」「儒教・歴史関係」の3種類で、

具体例を挙げますと『ユダヤの富豪の教え』『温州人は何故金持ちか』

『FBIの尋問テクニック』『三国志に学ぶ職場の人材管理』など、名前は

どれも似たような本が並んでいます。

 

f:id:jpbd:20150701172044j:plain

(写真:寧波駅。本屋が2~3軒、その他飲食店などが入っています)

 

駅や空港で本を買う客層はほぼビジネス客に限られるので仕方がないの

かもしれません。読書が趣味である私は過去、ある都市の空港でタイトルに

釣られ『温州人は何故金持ちか』を購入し、各地で高額不動産を根こそぎ

買っていくことで有名な温州の方々のメンタリティについては一定の理解が

深まりましたが、それと同時にビジネス感覚に長けた方々には

「他人の成功例など気にかけず自分の目標に注力する」

「無駄な金は使わない」という共通項に気づき、温州の富豪は間違っても

こんな本は買わないであろうと飛行機の中で激しく後悔した思い出があります。

また、『三国志や西遊記に学ぶ人材管理云々』もこちらのビジネス書の定番で、

自社の社員や部下の性格を登場人物に当てはめて特性ごとに管理する方法が

紹介されていますが、極端な例ながら実際はわりとよくありがちな

「職場の全員が悟空・曹操タイプ(=実力はあるがとにかく暴れまわる)

 だった場合どうするのか?」

といったかゆいところに手が届く解は書かれていません。

今回、寧波の駅の本屋にも欲しい本はないであろう事を見越して私は

上海から本を持ってきていたのですが、物語が佳境に入ったところでふと、

急に肩を叩かれ、顔を上げるとチケットの確認の警官と目が合い、

またしても心臓に悪い思いをしました。皆様中国で列車移動をされる際は、

いつでも途中で止められる短編集などを持参されることを強くお勧めします。

 

※日記の記事の内容はあくまでも筆者個人の体験であり、

 弊社の社としての見解を示すものではございません。

※記事の著作権は筆者及び筆者の所属先に属するものであり、

 無断転載は固くお断りします。