バックナンバー 中国最新情報“マカオのカジノ!” 2014年1月号

中国最新情報 “マカオのカジノ!” 2014年1月号

 

冒頭でお話したとおり、この度マカオのカジノを訪れる機会がありました。

私は賭け事には手を出さないと堅く心に決めております。

人生そのものがすでにギャンブルと化しており、不要なスリルが満載だからです。

しかしマカオのカジノは1ドルたりとも使わない私のような人間が遊びに行っても

充分にいろいろと楽しめる構成になっており、大変驚きました。

ありとあらゆる手段で観光客の消費を促すその手法と、それが的確に功を奏している

様子を観察するのに大忙しで、約半日の滞在でしたが休む暇もありませんでした。

今月の特集では、実地であちこち見てきたマカオのカジノの

「中国人観光客の徹底的な囲い込み手法」について考えてみたいと思います。

 

12015年、アジア太平洋地域のカジノ収入が米国を抜く見込み

 

2008年、マカオのカジノ収入が本場・米ラスベガスを抜き世界最大となった。

背景は富裕層の台頭である。アジア太平洋地域のカジノ収入は15年に800億ドル

近くに達し、米国を抜く。

(日経新聞  2013年10月21日)

 

世界のカジノ市場 地域別比 2015年に米国とアジアが逆転

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(日経新聞  2013年10月21日)

※表は記事を元に再作成したものです。

 

少し古い記事ですが、こちらの新聞によるとマカオの2011年の収入規模は

346.1億ドル、世界最大のカジノ地区となっています。

米国は全国で595億ドルですがラスベガスだけでは107億ドル、面積を考えると

いかにマカオが効率よく収益を上げているかがわかります。

丁度今月、マカオのギャラクシーグループ創始者、Lui Che Woo(呂志和)氏が

香港のリ・カシン(李嘉誠)氏を抜いてアジア長者番付のトップに躍り出たと

ニュースになったばかりです。

 

マカオのカジノオーナーである彼の純資産は今年35億米ドル増加し、

296億米ドルに達した。すでにリ・カシンより1億米ドル多い数字となっている。

http://www.nbd.com.cn/articles/2014-01-17/804225.html

(毎日経済網 2014年1月17日)

 

毎秒15万米ドル、つまり5秒につきランボルギーニ1台相当になるそうで、

電卓をたたくと人生がむなしくなるので考えるのはやめておきます。

今回訪問したベネチアン・マカオはギャラクシーに並ぶカジノの筆頭格でしたが、

明らかにターゲットをメインランド(大陸)から来る中国人観光客に絞っており、

徹底的なローカライゼーションを行い大量の富裕層を囲い込んだことで

短期間にこれだけの伸びを記録できたものと思われます。

私が訪れたその日も午後3時ごろと昼間にもかかわらずカジノは大混雑、

夜も国境や香港からのフェリー乗り場から大型バスでひっきりなしに

数百人ずつ観光客が大挙して押しかけていました。

2010年に政府主導でオープンし、44億ドルと急成長を遂げているシンガポールの

カジノも、その収入源はほとんどが中国人観光客による消費です。

それでは具体的にどのような方法でマカオのカジノは中国人観光客の

支持を獲得しているのでしょうか。

 

2、ベネチアン・マカオに見る中国人観光客囲い込み手法

 

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(写真:室内とは信じがたい長さの巨大なエスカレーター。

     カジノからショッピングモールへ直結しています)

 

あくまで私見ですが、中国の富裕層は4-5つのセグメントに分類できます。

詳細は今後機会があればご紹介いたしますが、これをただ「富裕層」でくくって

しまうのがマーケティング失敗の主な原因あり、同じ富裕層でもどのタイプの人が

消費の中心になっているかは再分析が必要です。

マカオで豪遊・散財している中国の富裕層は昨今の流行語で「土豪」と呼ばれる

特徴を備えた人々です。世間一般の成金のイメージとは若干異なります。

また、一晩に数百万元を使うような本物のビリオネアとは全く異なり、

海外在住経験のあるグローバルな富裕層ともまた違う、ローカルな富裕層です。

とにかく派手で目立つブランドのロゴや金ピカのモバイルガジェットなど、

分かりやすい富の象徴を好むことが特徴で、彼らの絶大な支持を得ている

アップル社の金色のiPhone5Sは“土豪金”と呼ばれております。

その他の特徴として、現金決済を好む、カジュアル志向、食については保守的

(中華が中心)など、このあたりについてはメディアでもさまざまな研究が

なされており、それらの報告に詳細は譲ります。

さてベネチアン・マカオはどのようなサービス戦略でこれらの富裕層を

取り込んでいるのでしょうか。

 

・完全中国語対応

 当然ですが中国語が通じます。そしておそらくこれが一番の盛況の理由です。

・ドレスコード皆無

 カジュアルな服装が好まれる中国では、デニムやスニーカーで入れないホテルや

 カジノ、レストランは衰退の一途をたどることになります。

 ちなみに、服は見た目がカジュアルなだけで実は結構お金がかかっています。

・喫煙エリアが半分確保されている

 世界のトレンドと逆行する流れですが、リピーターの囲い込みには必須です。

・ありとあらゆる通貨が使える

 銀聯カードを出したとたん、フロアに一つしかないレジに移動になる日本の

 デパートのような不便は一切ありません。現金もカードも空港の免税店並に

 つかえます。

・カジノのすぐ横に高級ブランド店が併設

 儲けた分すぐ還元。店内の品揃えも「金」「赤」「限定色」あるいは

 「大きいロゴ入り」且つ「フォーマルは置かず、デニムとTシャツ中心」という

 ツボをおさえた完璧さ、“売りたい物”ではなく“売れる物”がきちんとセレクト

 されていました。

・飲食店は中華を中心に配置

 日本人が世界中どこでも和食を食べたがるように、中国人にはやっぱり

 中華が人気。そしてここも喫煙エリアは必須です。

・一歩も外に出ないでよい複合観光施設

 一箇所に何でも揃っているので、祖父母+子供の三代で旅行をする観光客も安心。

 唯一の難点は広すぎて「ちょっとあの店まで」と戻れる距離ではないことくらい

 です。

 

ここに記したものが全てではありませんが、私個人が重要と思う順に

並べて見ました。カジノに限らず、観光地や複合商業施設もこの条件をある程度

満たしていれば、新規かリピーターかを問わず、中国人観光客の確保は容易に

なるでしょう。日本のカジノが実現するか現段階では予想がつきませんが、

今後もカジノ構想には注目したいと思います。

 

※本特集の記事の内容はあくまでも筆者個人の見解であり、

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