バックナンバー 社員の日記 2015年2月号

◇◇◇()新入社員の日記 2015年2月号(前編)◇◇◇ 

 

再びあけましておめでとうございます。2月の旧正月を終えようやくが年が

明けた気がしているSでございます。当地では旧暦の大晦日に日本の紅白

歌合戦に該当する春节联欢晚会、略して“春晩(チュンワン)”と呼ばれる

TV番組が放送されます。歌あり手品あり寸劇ありの盛りだくさんの内容

ですが、毎年見ているとどうしても飽きてきます。一方、期待を裏切らず

楽しい時間を提供してくれるのが『軍事・農業チャンネル』で年を跨いで

放送される“乡村=田舎”の“牛人=すごい人”を発掘するという一発芸を特集した

裏番組です。中国各地で過去一年にわたって各地の農村を回って収録された

コンテストの模様がダイジェストで紹介され“生卵の上に両足で立ち、

卵を割らずに頭頂部で皿回し”“腹に吸いつけた中華鍋の取っ手に縄を

くくりつけ軽トラックを引っ張る”など、かなり高度な雑技が披露されます。

しかし、雑技に関しては中国には想像を絶するようなレベルの達人が

層を成しているので正直なところあまり視覚的インパクトはありません。

それよりも「一体何故、それをやろうと思い立ったのか」是非お話を伺いたい、

独創的な芸にやはり目を奪われます。例えば、写真下のこちら。

 

 

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(写真:2月18日 軍事・農業チャンネル/台の上で延々と回転しつづける女性)

 

女性が布を広げ、小さな台の上で延々と反時計回りに回転しています。

どのくらいの時間回れるんですかという問いには『最長記録で10時間36分!』

と回答。何故そんな長時間回転しようと思ったのかという問いには

『不知道! 我从小就喜欢这样转!(わかんない!小さい頃からこうやって

回るのが好きだったの!)』と、また回答。この方のすごいところはぐるぐる

回りながら更にはさみで伝統の切り絵「剪紙」ができるところで、

番組の中でも高速回転しつつ複雑な漢字や模様を次々に切り出していました。

中国では現在、画一的な教育方針が個人の独創性を潰すと大きな問題に

なっており、留学熱は加速する一方、企業もこぞって「シリコンバレーの

人材育成」などを模倣しています。しかし、本当の創造性は果たして学業や

事業の分野でのみ発揮されるものでしょうか。番組のキャッチフレーズ

『艺在民间=芸術は民間に在り』の通り広大な中国にはあらゆる分野で

在野に埋もれている達人が星の数ほど存在します。誰も思いつかないような

突拍子もない発想の持ち主は意外と身近なところに潜んでいます。

そして達人と凡人の差はおそらく「自分の才能に気づくか否か」という

ちょっとしたきっかけだけです。食わず嫌いで避けていた事にチャレンジ

することにより、思いがけない適性が見出されるかもしれません。

ちなみに私は部屋を散らかす速度と質には絶対の自信があります。

この特技をなんとか利用し、アルティメット・お掃除にチャレンジしたい方や

5Sが味の方、あえて混沌に身を置きたい方などにサービスとして

提供できないかと不毛なことを考えつつ、今月も最新のニュースをお届けします!

 

1月某日  ハルピン出張 -25℃の地の東北料理とロシアの刺客

 

リニューアル後、“旅のメモ~全土で晒した恥の記録~”と化して来た

日記のコーナー、旧暦2015年も引き続き素朴な疑問と率直な感想、

そして有料メディアではまず出てこないであろう恥の記録をお届けして

いきたいと思います。1月の後半に会議で3日間黒竜江省ハルピンに

滞在してまいりました。ハルピンはロシア風の建築が立ち並ぶ中国東北の街で、

その緯度は中国最高(北緯43.26~53.33)。冬は気温がマイナス数十度に

達する極寒の地、冷蔵庫より窓の外に出しておく方が食料が長持ちし、

数時間置けばバナナで釘が打て、マスクをつけずに外出するとまつ毛が凍る

世界です。北方では“暖気”と呼ばれる北欧や北米で使用される熱水を鉄の

パイプに通して室内を循環させるヒーティング・システムと同じものが

普及しているので室内はとても暖かく快適ですが、一歩外に出たが最後、

室内外気温差50℃の世界に放り出されますので、出発前にスキー用パンツ、

マスク、ニット帽、スノーブーツに耳あて、手袋など思いつく限りの防寒具を

買い込み準備は万全。着膨れした上マスクでほぼ顔を覆う格好なので

今後万一銀行強盗などへの転職を迫られても即、勤務できそうです。

さて、今回は出発直前まで連日、夜中も会議のパワーポイントを作っては

直し、作っては直しと終わりの見えない作業に忙殺されていたため、

毎回の食事の時間を心から楽しみにしておりました。

中国の東北の料理は一言で表すのであれば「ワイルド」、素朴な材料を

塩辛い味で豪快に調理するのが特徴で、じゃがいもや白菜を付け合せに

豚肉と羊肉が多用されます。そのためふと気を抜くと

『肉肉肉肉芋肉でんぷん肉芋芋肉』

と格闘ゲームのコマンドの如き食べ合わせになりますが、肉料理が好物の

私には願ってもない組み合わせです。しかし厚着でごまかせるとはいえ

数ヵ月後に春を控えた現在、見境なく暴食して太るのは得策ではありません。

女性誌のキャッチフレーズ「着やせ」などに騙されてはいけません。

あれはあくまでも「気休め」の一種であり、自分を騙しながらダイエットの

モラトリアム期を設けるようなものです。ところがハルピンには思わぬ刺客が

あらゆる場所に潜んでおり、その猛攻により私の「薄着になる前に痩せる」

という名前からして失敗が見えていながら多くの人がこっそり立てたことが

あるであろうありがちな計画は無残に蹴散らされました。

刺客とは一体何だったのでしょうか。詳細は後半、ニュースレターの最後へ!

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◇◇◇()新入社員の日記 2015年2月号(後編)◇◇◇ 

 

中国は日本のように島国ではなく広大な大陸のため、陸路で行き来できる

隣国が多数存在します。中でもロシアは同じ共産圏、且つ過去中国で輸入文化が

一切否定されていた特殊な時代でも唯一付き合いのあった外国であり、近代化の

目標とされていた時代があった背景からロシアの文化が身近です。

完全に欧米志向の現代中国からは想像し難いかもしれませんが今でも年配の方は

多くが外国の音楽といえば『ロシア民謡か軍歌』、洋食は『ロシア料理』、

バイリンガルといえば「中・露二ヶ国語」という認識をお持ちです。

私自身も日常生活においてこのようなロシア文化の中国への浸透ぶりは十分

実感していたつもりでしたが、長年上海から出ない生活を続けていたため、

上海は例外的に他都市よりヨーロッパ志向という『歴史的要因』と東北地方は

場所によっては他都市へ行くよりロシアの方が近いという『地理的要因』の

影響を完全に失念していました。中でもハルピンはモスクワまで乗り入れる

列車が毎日駅に発着し、長距離トラックで大量の食材がロシアから

輸入される街です。このような情況を理解しないまま現地入りして

しまったため、街中のいたるところに潜むロシアの刺客に全く気づき

ませんでした。一体何を見つけたのでしょうか。

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“肉・芋・でんぷん”のカロリーセットで必要以上のエネルギーを蓄えつつ

日々の会議は順調に進みます。

緊張した脳の疲れをほぐすには何が最適か?

そうです。糖分です。

コーヒーブレイクにケーキやクッキーなどの甘いものが追加されていると

仕事の疲労も一気に回復できますが、中国は街によっては所謂「洋菓子」が

手に入りにくい場合があります。また、仮にあっても高額な関税により

目の飛び出るような価格で手が出ないこともしばしばです。ハルピンは現地

事情が不明だったため必要最低限のおやつを上海から持参していったのですが、

私の心配は杞憂に終わりました。街中の至るところにロシアの輸入食品専門店が

あふれていたからです。観光地の土産物屋は強気の高額設定ですが、

ごくふつうの輸入食品店は地理的な優位性から輸送コストが安いため、

すべて上海の数分の一という破格のお値段。今回ふらりと入ったお店には

ソーセージ等肉類、ハム、お菓子がずらりと並び、手作りのロシアパンや

ケーキなども販売されていました。

脳内で鳴り響くチャイコフスキー“1812年(本物の大砲が鳴ります)”。

もう買うしかない。いや、狩るしかない。

気が付くと手にしたカゴはすでに入れた覚えのないお菓子であふれかえって

いました。普段なかなか目にする機会のないロシアのお菓子ですが、

その外観から十分すぎるほど糖分が取れるであろうことは容易に想像がつき、

疲れた脳の栄養補給にはうってつけ。中でも今回感激したお菓子はこちらです。

 

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(写真:左上 チョコレート菓子の外観。 右上 大きさ比較。

     左下及び右下 商品の詳細。一文字も読めません)

 

食感の形容が難しいのですが、クッキーよりパンに近く、外側が

チョコレートと蜂蜜でコーティングされておりパンチの効いた甘さが

おやつや朝食にぴったりです。しかしお店の経営者はロシア人、商品名も

ロシア語のため、結局正式な商品名が何なのかはついに分かりませんでした。

とりあえずその時は一袋だけ購入しましたが数日ともたず完食。

すっかり味が気に入ってしまい、追加で買いたいと思ったものの名称が

分からないのでは調べようがありません。パッケージの裏側は驚きの9ヶ国語

表示ですが、ロシア語、カザフスタン語、キルギスタン語、アゼルバイジャン語、

グルジア語、ウクライナ語などのため一文字たりとも読めず挫折。

輸入食品は中国語の名称と成分表示のシールが張られていることが多いの

ですが、今回は何も添付がないのでお店の品物の仕入れルートや驚きの安値の

トリックなど、背景はだいたい想像が付きました。

とにかく、品物の来歴にはこだわりません。

名前の分からないあのお菓子をもっと食べたい。

食べ物関係となると異様な粘り強さを発揮する私はどうしても諦めきれず、

上海に戻ってからすぐにあらゆる商品を網羅するネット通販「タオバオ」で

数日間地道に検索を続け、ついに目当ての商品を見つけました。

中国語名は「俄罗斯蜂蜜饼(ロシア蜂蜜クッキー)」シリーズの

「巧克力味(チョコ味)」だそうです。この粘り強さをもう少し他に

活かせないものかと若干反省はしましたが、「もし私が心を入れ替え、

怠惰な部分が少しずつ勤勉さと入れ替わり、最終的に完全に勤勉且つ品行方正な

人間に生まれ変わったら、それはもはや私とは違う誰かなのではないか」

とテセウスの船のパラドックスに陥ったので、怠惰は個性と認め、その個性を

更に伸ばすため追加購入したクッキーは寝転んでだらだら食べようと思います。

中国に居ながらにしてロシアの料理も楽しめるハルピンは観光地としても

おすすめです。かの地で食べ物の誘惑を避ける方法はむやみにサイフを

持ち歩かないこと、そして空腹時に買い物に行かないことです。

これさえ守れば大きな被害はありませんので是非、

皆様も足を運んでみてください。

 

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