バックナンバー 社員の日記 2014年12月・2015年1月合併号

◇◇◇ ()新入社員の日記 2014年12月・2015年1月合併号(前編)◇◇◇ 

 

新年快楽!旧暦進行のため1月を過ぎても年が明けた気がしないSでございます。

旧暦は年明けが1~1.5ヶ月ほどズレますので元旦を迎え、毎年前年に

達成できなかった“20××年の目標”を思い出してもしばらく悪あがきする

猶予があるのですが今回は2014年の目標が何だったのか、そもそも目標を

立てたのかどうかすら思い出せず脳の老化をつくづく実感しました。

思い出せない事項が重要事項ではないことを願います。

さて、上海では毎年11月の終わりごろから街中のあちこちでクリスマス

ソングが流れます。中でも2000年台初頭、米国の女性歌手・ビヨンセが

リードボーカルであった時代のDestiny’s Childの「8 days of Christmas」は

現在でも非常にポピュラーな選曲です。この曲は毎日一つずつ彼氏から

もらったプレゼントを自慢していく歌で「クリスマス8日目、ダイヤモンドの

指輪をもらった!」とのっけからいきなり高額商品が登場。

ここからプレゼントの羅列が始まり、間には「二人だけのディナー」

「私のために書いた詩」など心温まるプレゼントも挟まれるものの、

「クリスマス2日目、CLKメルセデスのキーをもらった!」ですべて台無し。

そして「Doesn’t it feel like Christmas? (クリスマスって感じがしない?)」

のフレーズが繰り返し歌われます。日本では『しないしない・・・』と内心

激しくツッコミを入れていたのですが、曲を聞くたびに感じていた違和感を

現在の上海ではほぼ感じないことに改めて気付きました。

中国のバブルを経験した今となっては高級車やダイヤのプレゼントに

目新しさは一切なく、いっそ「365 days of Christmas」とタイトルを変えた

ほうが現状に沿っていると思います。

誤解なきように付け加えますと、車や不動産は富裕層に限定される例であり、

上海の大多数の女性は自分の仕事を持ち、常識的な金銭感覚を有し、

堅実な生活を送っています。但し、たとえ安価な花や数百円程度の

ファーストフード、無料の手作り品であろうと贈り物をするのは必ず

常に男性であり、彼女のかばんを持ってあげる、病気のときはご飯を作って

届けてあげるなど自身のベスト・パフォーマンスを尽くすことが生涯に

渡って求められます。今年は長年の違和感が霧消したと同時に感覚が

完全に上海化されていることに気付き、そして気付いたからといって

自分が上海の女性と同じように振舞える環境にはないことに更に気付く

という内心複雑なクリスマスを過ごしました。ちなみに以前ご紹介の

上海人の夫と過ごした拙宅のクリスマスのメニューは前日のデリバリーの

残り物、プレゼントのプの字も出ませんでした。

パフォーマンスは評価“Unacceptable”で心の閻魔帳に記録しておきます。

今年こそはと人生一発逆転の夢を抱きつつ今月も最新のニュースをお届けします!

 

■某月某日  天津出張 名物“狗不理”肉まん

 

しばらく前の話になりますが、昨年出張で天津を訪問する機会がありました。

川エビのから揚げや“炸酱面”に感動した経緯は先日のニュースレターの

レストランアワードにご紹介の通りですが、実は天津にはさらに有名な

名物があり、それが“狗不理包子(ゴウブリーバオズ)”と呼ばれる肉まんです。

狗は文字通り日本語の犬、理には中国語で「相手にする、かまう」の

意味がありますので不が付くことで「相手にしない、無視する」に転じます。

従って狗不理包子は『犬が相手にしない肉まん』となりますが、

この不思議な名称には故事があります。

清の時代に高貴友という男性がおり、子犬のようにすくすくと育つよう

「狗子」というニックネームをつけられて育ちましたが、

彼が天津の路上で売り始めた肉まんがクチコミで大評判になり、

あまりにも忙しくて客が呼んでも「相手にしない」ことから「狗子不理」、

転じて「狗不理」となったそうです。

より詳しい故事の詳細は下記リンクをご参照下さい。

 

http://baike.baidu.com/link?url=-M9l0bGEalvPehHtf-0mt6h_zXpaP71Mr8EOCuGlfLKrfjemyGuy3g0UgFply7gqT1hrIQaYUs1FxYYPt0_DpDOjEc0a_7fN8O_TaEvmYR7

(百度知道)

 

袁世凱が西太后に献上した!江沢民氏も胡錦涛氏も食べた!という

『御用達』肉まん、中国国内でも大変有名なのですが、出発前に私が

周囲の友人知人にリサーチしたところ、誰に聞いても答えは「普通の肉まん」。

まずくはないけれど感動するほどおいしくもないと満場一致、その上

「あまりにも普通の肉まんすぎて犬ですら食べないから狗不理とも呼ばれる」

とウラの笑い話まで聞いてしまい、わざわざ食べに行くのは面倒な気持ちと、

そこまで言うならどれだけ普通かいっそ食べてみたい気持ちの間で

板ばさみになりました。どの国に限らずおそらく情況は似たり寄ったり

だと思いますが、中国でも「元祖××!」という大型店舗の名物料理より、

小さなお店の普通の料理の方がおいしいことが多いです。今回は会議中心の

日程で時間がなく、こんな悩みも頭からすっかり抜け落ちていましたが、

そんな私を突然肉まんの世界に引き戻した出来事がありました。

詳細は写真をご覧下さい。

 

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(写真:私を完全に空気扱いしてくれた天津のかわいい小型犬たち)

 

天津は寒い気候のせいか猫が少なく、そのかわりに街中では小型犬を多数

見かけましたがどの犬も申し合わせたように私の事を完全に無視します。

上海では散歩中に声をかけると飼い主の同意の下、犬の方も快くなでさせて

くれたりするのですが、天津の犬は口笛を吹こうが名前を呼ぼうが完全に無視。

写真下の犬に至ってはわざわざ私が移動するたびに反対の方向に顔を背ける

という徹底した非協力的姿勢を見せてくれました。

これが本当の『狗不理』。

さて、唐突に狗不理肉まんのことを思い出したものの、時間がないまま

最終日になってしまったのですが、上海に戻るフライトが遅れ天津の真新しい

ぴかぴかの空港ターミナルでみやげ物屋を冷やかしていた私の視界に突如

『狗不理』本店の看板が飛び込んできました。

買うべきか、買わざるべきか。

脳が悩んでいる間にもすでに手は財布を握り締めており、お店の女性と

目が合った瞬間、自分の負けを悟りました。

私の散財記録の詳細は後半、ニュースレターの最後へ!

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◇◇◇連載 ()新入社員の日記 2014年12月・2015年1月合併号(後編)◇◇◇

 

“しない後悔よりする後悔”をモットーに過ごしてきた時間も数十年目に

なりますと一つ一つは安価ながら無駄に散財した金額がトータルで計算すると

軽視できない数字になっており、時折ハンカチを噛んで叫び出したい衝動に

駆られます。唯一の救いは小心者且つ資金不足のため大額の損害は皆無な

ことです。先日も雪遊びをする為「雪合戦の雪玉を作る型」をネットで

検索しており、シンプルなタイプが約5元、色々組み合わせたセットが約100元、

『こういうのは迷わず一番高いのを買えばいいんです』

『ここぞという時に中途半端な値段のものを買うから中途半端な思い出しか

 残らないんです』

とカートに入れようとしたところ、同僚の日本人がゴミを見るような視線を

向けてきたので、何とか思いとどまりました。

その後、AK47を模した大型水鉄砲を買うか悩んだときも似たような反応を

返されました。彼にはそのうち個人的に報復するとして、考えを改める

つもりはあまりなく、今後も「家に着くなり存在を忘れられ、次の大掃除まで

日の目を見ることがなくなる事確実」な微妙なみやげものをみかけた場合、

私はやっぱり買ってしまうのだろうと思います。

そんな私を空港で待ち構えていた狗不理直営店。

一体何を購入したのでしょうか。

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ふらふらと吸い寄せられ店に一歩足を踏み入れ、まず驚いたのはその

パッケージです。肉まんといえば中国では朝食をはじめとする軽食の代表、

安価でお腹もふくれる庶民の味方にふさわしい素朴なパッケージをイメージして

おりましたが、実物は缶にも箱にも西太后の写真がフィーチャーされており、

うかつにキッチンに放置できない威圧感。とっくに中身を食べ終わった2015年

2月現在、いまだに缶を捨てることができません。

 

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(写真:左上 直営店の様子。 右上 狗不理肉まん、缶には西太后の写真が。

     左下 一口サイズの肉まん。 右下 狗不理トランプ。詳細は後述)

親切な店員によると饅頭の中身も肉のほかいくつか種類があり、

今回は基本の肉餡の他お土産用に他の種類も購入。上海に戻った後自宅で

食べてみましたが味は評判どおり可もなく不可もなく普通の肉まん、

明らかに割高なのがブランド料と壮麗なパッケージのせいである点は以前の

ニュースレターでご紹介した今はなき贈呈用豪華月餅と同様です。

ここまでは購入時点で予想の範囲内ですが問題はレジ横においてあった

ロゴ入りの小箱です。肉まんのスキマに隠れるように配置されていたその

黄色い小箱はタバコの箱にそっくりなサイズ。しかしライセンスのない

店舗でのタバコの販売は違法です。気になって聞いてみると答えは

「是这个吗? 这是扑克牌」(これ?トランプですよ)

何故トランプが肉まんと結びつくのか分からずレジでフリーズする私。

反応がないことを悟った店員が出してくれた中身を見ると、確かに肉まんが

中央に印刷されたジョーカーがちらりと見えました。てっきり一定金額以上

購入の顧客向けのノベルティか何かかと思いきや、聞けば売り物だとのこと。

『多少钱啊?(いくら?)』「5块钱1盒(1箱5元です)」

『好,我要了(よし、買った)』「你买这个?(買うんですか?)」

『买两盒(2箱買う)』「啊!?(ええ!?)」

1箱でいいんじゃないかという店員を押し切って迷わず2箱購入。

そんな物好きは滅多にいないようで相手は始終目を白黒させていました。

物好き第1号の座を独占できて光栄です。飛行機に乗り、上海の自宅へ

戻るなりスーツケースを放り出しトランプの中身を確かめてみましたが、

5元にしては手の込んだ造りで全てのカードに異なった肉まんやお店の歴史を

現す写真が印刷されており、にわかに狗不理に関する知識が増えました。

が、案の定数を数えてみるとカードが一枚足りず、念を入れて2箱買って

おいて本当に良かったです。「備えあれば憂いなし」としたり顔で自慢したい

ところですが、前述の日本人の同僚からまた遠まわしに蔑まれそうなので

ささやかな自慢は心のうちにしまっておきました。

ところでこのトランプ、その後自宅のどこにしまったのか一向に思い出せず、

脳の老化をつくづく実感しました。

冒頭と同じ結論で今月の日記の結びとさせていただきます。

 

※日記の記事の内容はあくまでも筆者個人の体験であり、

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