バックナンバー 社員の日記 2014年11月号
◇◇◇(旧)新入社員の日記 2014年11月号(前編)◇◇◇
健康診断の結果におびえているSでございます。思いがけぬところで
再検査の通知を受け取り、通院している間にレターの発行が遅れ
申し訳ございませんでした。中国の大学病院にはシーメンスの最新の
CTスキャナが備えてありハード面は申し分ありませんが、点滴の針を
ワイルドにずぶりと刺された箇所が現在痣になっており、ソフト面の不安と
患者が多すぎる中国医療の問題を身を以って再認識しました。
11月は北京で開催されたAPECの報道を追いかけておりましたが、
会談の内容よりも中国ではファースト・レディである習主席夫人・彭氏に
焦点が当てられておりました。元々ソプラノ歌手として有名であった
彭氏は国内の人気も高く、手にしたバッグ、スナップされた洋服や
携帯電話が翌日から検索数、販売数ともにうなぎのぼりになる国家の
広告塔であり、中国政府もこの効果を最大限に活用するため彼女が
身に着けるものをすべて国産ブランドで統一するなど常に広告戦略に
余念がありません。
ところで、今回彭氏ともに話題を攫ったのはロシアのプーチン首相です。
まずはAPEC、習主席の隣にいた彭氏の肩に自分のストールをかけてあげた
プーチン氏の行動が中国のみならず世界各国でも様々な憶測を呼びました。
http://edition.cnn.com/2014/11/11/world/asia/putin-liyuan-shawl-apec/
(2014年11月11日 米CNN)
“中国のファーストレディの魅力に屈したプーチン!”
“今後の中露関係を意識か?”
など、書かれ放題です。真意はプーチン氏ご本人しか知りえませんが、
暖冬とはいえ中国の北方の気候を考慮し、個人的には単に寒そうに
見えたんだろうと思っております。
続いてG20、各国首脳がコアラを抱いて記念撮影する様子が世界中の
メディアで取り上げられた際、プーチン氏の写真も公開されました。
(2014年11月15日 英Daily Mail)
“自由の世界のリーダー・大統領オバマも鉄の首相・メルケルもこの
恐ろしく写真うつりのいい動物の前には無力!”
という見出しの下、プーチン氏のそれぞれの写真には
『もうそんなに怖くない:コアラを抱いてにやりと微笑むプーチン首相』
『逃げ出せ:コアラはプーチンの鉄の腕からどうしても逃げ出したいらしい』
と、秀逸なコメントがついております。
コアラ稼業もなかなかに危険に満ちているようです。
ここ数週間の検索履歴が「Koala Putin」ばかりだった私は視野の狭さを
反省しつつ、今月も最新のニュースをお届けします!
■10月某日 重慶出張 名物激辛鍋と黒車(白タク=非正規営業タクシー)
10月末、四川省重慶へ出張する機会があり、始めて本場の四川料理を
体験しました。日本では麻婆豆腐などで知られる四川料理はその飛びぬけた
辛さで有名ですが、同じ麻婆豆腐でも本場のそれは全身から汗が噴出し
痛覚が刺激される辛さです。重慶の名物は「麻辣火鍋」というその名の
通りの激辛鍋、数年前に日本業務部の社員が挑んだ結果、翌日ホテルに
こもりきりになりかけたといういわく付きの鍋であり辛いものが苦手な
私は出発前から決死の覚悟で臨む気でおりましたが、今回は事情を察した
重慶人の同僚が伝統の味をマイルドにアレンジしたチェーン店へ
連れて行ってくれました。その写真がこちらでございます。
(写真:豪華な一人用鍋。右手前は重慶の地ビール“山城ビール”です)
真っ赤な方が牛脂に唐辛子を溶かし込んだ重慶名物の激辛スープ、
随分マイルドにアレンジされているものの、口の周りに付いただけで
ひりひりと痛む辛さ、目の周りや鼻の粘膜に塗ったら十分に拷問として
機能しそうです。『塗りたい相手リスト』を脳内の閻魔帳から
ピックアップしてほくそ笑みつつも私は大事を取って白い方の辛くない
スープを中心に食事をすすめましたが、同行の日本人の同僚は辛いものに
目がなく、大量に平らげたところ翌日の朝食の席で「やっぱりお腹に
来ました」とダウン。にも関わらず彼は朝食のお粥に唐辛子を追加。
辛さは味覚ではなく痛覚であり、人間の体は痛みを感じるとその苦痛を
和らげるために脳内麻薬を分泌するそうですが、もしそうであれば
目の前の彼はランナーズ・ハイならぬスパイス・ハイに陥っており、
冷静な判断を失っているはずです。
私はそんな精神状態の同僚と別れ次の出張先へ移動してしまって
よいのでしょうか?・・・と、一応ここまで心配はしたのですが、
実際は「昨日の今日で何してるんですか」と諸々の意図が省略された
発言になりました。
日本語には「口下手」という便利な表現があって本当によかったです。
重慶は山地の都市で美しい景色が見られますが、起伏もトンネルも多いため
土地勘のない人間が地理を把握するのは難しく、タクシーを拾うのが大変です。
中国では目的地と反対方向の道路でタクシーを捕まえてしまうと
1、Uターンできる道路まで遠回りになる
2、運転手に盛大に舌打ちされる
3、乗ってる間中、運転手から文句を言われる
4、「これだから他の都市の人は・・・」とお説教+エンドレス地元自慢が始まる
5、黙って回り道されぼったくられる
の5つのうちいずれかに該当する確立が高く(親切な人ももちろんいますが、
当たるかどうかは運次第です)どれも避けたいのですが、今回は時間帯が
悪かったのか、会食後ホテルに戻ろうとしてもタクシー自体が全く
見当たりません。そんな時、唯一の選択肢となるのは非正規営業のタクシー、
いわゆる白タクです。中国語では日本語とは逆に「黒車」と呼ばれ、
目的地についた途端法外な料金を請求される、誘拐事件の温床と化している、
正規タクシー業界への打撃が大きいなどの理由から厳重な取り締まりが
なされていますが、その数は一向に減りません。
安全性はゼロですが中国の都市部郊外の工業区や終電を逃した繁華街
などではそもそも白タク以外に移動手段がないことも多く、自己責任で
安全そうな車を選び賭けに出るしかありません。重慶でも大通りで
立ち往生する私と同僚の前に間もなく一台の車が止まり
「乗ってく?どこまで?」と若い運転手が窓から顔を出しました。
一体どうなるのでしょうか。
詳細は後半、ニュースレターの最後へ!
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◇◇◇(旧)新入社員の日記 2014年11月号(後編)◇◇◇
安全な白タクを選ぶコツと乗車時のポイントは人により異なりますが、
「乗車前に値段交渉必須」「絶対に先に支払わない」などの基本中の
基本のほか、私が特に重視しておりますのが運転手の人柄です。
不要なトラブルや危険を避けるため温厚そうな人を選ぶのはもちろんのこと、
不幸にも万一トラブルが発生してしまった場合「口げんかや値段交渉で
なんとか勝てそうな相手がどうか」というのは大変重要なファクターとなります。
乗る側が「黙って支払いそうないい客」を狙うのと同様、乗る側も乗る側で
「とっさに計算ができず安い料金で“うん”と言いそうな運転手」を狙う
弱肉強食の世界です。今回目の前に止まった白タクの運転手は若い男性、
フレンドリーで温厚そうな印象、一足先に価格交渉を始めていた同僚との
会話から料金も相場どおりと判明。「○○ホテル?知らない。でもたぶん
なんとかなる!その近くまではいける!50元!」
具体的距離が不明のまま価格をFIXしてしまう運転手。
『この人ならいける』。
そう確信して彼の運転する車に乗り込みました。
果たして無事に帰れるのでしょうか?
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運転手は予想通りの温厚な人で、私と同僚の日本語のやりとりを
聞くや早速反応し
「あのぅ、つかぬことを聞きますけど、今話してるのは何語?」
日本語というと「TVドラマと全然違う!」と大興奮。
そこから話が弾み、重慶の交通事情について色々紹介してくれたのですが、
ふとメーターを見ると一般道路にも関わらず時速100キロ前後の猛スピードで
直線を飛ばしています。最近は都市部ではスピードカメラが急激に普及して
おり、スピード違反は罰金を取られるはずなのですが、カメラのフラッシュが
光っても無視。気になって聞いてみたところ
『あんなの全部ニセモノだよ。光ってるだけで写真なんか撮ってないって』
『上海あたりは厳しいかもしれないけど、重慶はまだまだ大丈夫!』
何を根拠に“大丈夫”なのか。情報のソースは何なのか。再度問いかけてみると
『我自己也试过好多次!没问题的!』 (何度も試してみたけど大丈夫だった!)
ソースも何も彼の実体験でした。「そっか!よかったね!」と返事をしてから
何かがおかしいことに気づきましたが、あまりに自然な流れだったため一瞬
どこがどうおかしいのか自分でもわかりませんでした。
日本だと罰金になるのかという質問が出たあたりでようやく正気を
取り戻したのですが、そこでも
『中国が日本みたいに厳しくなるにはまだN多年(=何年も)かかるよ』
と言われ、自然に
「そう、じゃあ違反するなら今のうちだね!」
とうっかり返しそうになりました。
交通渋滞などもまだ北京や上海ほど深刻化していないようで、
駐車違反の取締りも
『如果是在高速肯定有罚款了。一般这种马路想怎么停就随便怎么停!』
(そりゃ、高速とかに停めたら罰金だけど、普通の路上なら自由に停め放題!)
とのこと。何を以って大丈夫なのかはもう聞きません。
どうせ実体験に決まっています。
そんな話をしている間にかれこれ30分近く運転したにも関わらず、
私たちの滞在しているホテルはゴルフ場に囲まれた山の中にあったため
まだ相当な距離があります。ここでようやく異変に気付いた運転手が
「えっ、まだ先なの?」「山の中なの?」「50元じゃ赤字だよ・・・」
と焦り始めますが、今頃気付いても乗車の時点で私と同僚の手中に落ちたも
同然の彼に為す術はありません。
「ほら!トンネル!(まず視線を逸らす)」
「友達と楽しく交流して会話したと思えばいいじゃない(キーワード:友達)」
「日中友好!日中友好!(最後はこれでごまかす)」
と丸め込まれ、ホテルの入り口で
『しょうがないなぁ、まぁ、二人とも礼儀正しかったし50元でいいや』
と追加料金なし。お得な料金で重慶事情まで教えてもらい、大変有意義な
体験になりました。数十元の赤字が出ているはずの彼には悪いことを
しましたが、事ここに至っても「Sさん、30元でしたよね?」と
まだ値切ろうとしていた同僚には感服しました。
今回はたまたまいい人に当たり幸運でしたが、白タクの利用は実際に事故に
繋がるケースもありますので、ご利用の際は十分にご注意の上
自己責任でご選択ください。
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